九州電力が太陽光発電の買い取りを一時停止

先週末のことですが、このようなニュースが入ってきました。

YOMIURI ONLINE 供給過多恐れ、九電が太陽光発電一時停止要請へ

九州電力は10日、経済産業省の有識者会議で、太陽光などの再生可能エネルギーの発電量が増えすぎているとして、月内にも発電事業者に一時的な発電停止を求める可能性があると説明した。離島を除き全国で初めての例となる。

日本経済新聞 九電 13日に太陽光制御 発電業者に停止要請、国内初

九州電力は12日、九州の太陽光発電事業者に13日の日中に一時稼働を止めるよう求めると発表した。気温の低下で電力需要が減り、電力が余って供給が不安定になるのを防ぐ。国は再生可能エネルギーの普及を目指してきたが、発電分を生かせないことになる。今後も増える再生エネをうまく活用するには、広域で電力を共有する仕組みや蓄電の普及が必要になる。

九州では現在、太陽光発電の割合がかなり多くなってしまっているため、結果として電力の供給が大きくなってしまい電気が余ってしまう状態になります。そうなると電気の需給バランスが崩れる恐れがあります。そのために普段買取をしている太陽光発電の電気を買い取らないで、電力の運営をしていこう、という事です。

そして13日には、実際に太陽光発電を買い取らない形での、運営が行われました。

日本経済新聞 九電、太陽光発電を一時停止 停電回避へ初の広域実施

九州電力は13日、一部の太陽光発電を一時停止する「出力制御」を実施した。離島以外での出力制御は全国初で、熊本県を除く九州6県で実施した。13日の九州は晴天で太陽光発電が増える一方、気温の低下で電力需要は伸びない見通し。電力が余って供給が不安定になり、大規模停電につながるのを防ぐため出力制御に踏み切った。

約9700件の計43万キロワット分を止めた。一般住宅の屋根などに設置されている出力10キロワット未満のものは対象外とした。再生可能エネルギーを管理する専用システムを通じ、遠隔制御で電力が送電網に流れないようにした。

電力の需給バランス」については、またいずれこのコラムでも取り上げていきたいと思いますが、電気の需要と供給のバランスが崩れてしまうと一体どうなるかというと、9月の北海道胆振東部地震の際に発生したような、大規模な停電が発生してしまう恐れがあるのです。

実は九州では以前から、この秋に電気が供給過多になってしまって、余ってしまう可能性が指摘されていました。

「もう太陽光、いりません」九電、連休中8割もカバー、原発再稼働も一因

暮らしやすい気候を背景に電力需要が落ち込む秋に、電気が「余る」可能性が出ている。太陽光発電が多い九州では、2018年の大型連休には電力需要の8割を太陽光発電でまかなう時間帯もあり、供給が需要を上回る可能性が出てきたためだ。

九州では、今年のゴールデンウィーク期間中に、電力需要の約8割をまかなう事ができました。九州は日照時間などの条件が、太陽光パネルにとって、非常にいい環境にあると言われています。また気候も良く冷暖房の必要が無かったこと、連休のため工場やオフィスなどが電気を使う必要が無かったので、電気の需要が低かったことも、そうした背景にあると言われています。

そのためやはり同様に気候が良い秋には、同様に電気の需要が少なくなるのでは無いかと言われていました。また九州ではこの6月から玄海原発4号機が再稼働を、また8月には川内原発2号機が再稼働を始めています。尚更電気が余る状況が整っていました。そしてこの10月に、実際に太陽光発電無しでも電力の供給が見通せるようになったため、太陽光発電の買取をやめたという事になります。

しかし、ゴールデンウィークの段階で太陽光発電だけで電力がまかなえたのであれば、太陽光発電の買取をやめるのでは無く、また太陽光発電だけで電気をまかなえばいいのでは無いでしょうか?もちろんそれには理由があります。

結論を言ってしまうと、太陽光発電では電気の供給量を調整するのが、難しいからです。つまり太陽光発電では、電気を安定して供給することが難しいのです。確かに春の段階では、太陽光発電でほとんどの電力需要をまかなえたかもしれません。では秋の電力需要が低い時にも全く同じように、太陽光発電でほとんどの電気をまかなう事が出来るのか?となると…これは実は100%の保証は出来ません。

ご存知の通り、太陽光発電は「太陽光」によって、発電をします。という事はその時の天気によって発電量が左右されてしまうという事になります。曇りや雨の時は、どうしても発電量が減ってしまいます。そして天気は、先の予測がなかなか難しいものです。

そのような先の読めない発電方法に頼るのであれば、再稼働したばかりの原子力発電や火力発電をメインとした方が、はるかに安定して発電を出来ますし、また大量の発電が可能です。さらに太陽光発電の場合、あくまでも各家庭や中小の太陽光発電業者が発電した電気を買い取るという形となります。電気の買取となると、当然その分費用が余計にかかりますし、その費用は私達の電気代に上乗せされることになります。私達からすれば、当然電気代金は少しでも安い方が望ましいです。

そういった事を踏まえて、今回は太陽光発電を買い取らず、原子力発電や火力発電などで電力需要をまかなった、という事になります。

もちろんこれから冬になれば、暖房需要や照明需要が増えますので、太陽光発電を買い取って供給にまわす必要が出てくるかと思います。なので太陽光発電が全く不要になるかといえば、決してそんな事は無いでしょうし、またこれからの発電を考えていくうえで、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは、重要な位置にあるのは間違いありません。

しかし一番大切なのは、何よりも「電力の安定供給」です。電気が無ければ、工場では生産活動が出来ませんし、家庭生活も成り立ちません。大切な命が失われてしまうこともあるでしょう。発電方法をどれか一つに限定することなく、かつ常に余裕があるように、電力の需給バランスを考えた適切な運用こそが求められているのでは無いでしょうか。