太陽光発電によくある5つの誤解

先日の工場電気ドットコムのコラム「2018年7月の豪雨で露呈した太陽光パネルの思わぬ弱点」でも触れましたが、先日の西日本豪雨をきっかけに、様々なところで太陽光発電の危険性が指摘されるようになりました。

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確かに西日本豪雨に伴って起きた、太陽光パネルの事故は本当に痛ましいものです。しかしそれらの危険性は、西日本豪雨以前から専門家の間ではたびたび指摘されていたものです。しかし太陽光発電が持っている、漠然とした「エコロジー」というイメージが先行して、それらの欠点があまり報じられてこなかったのでは無いでしょうか。

今回はそんな太陽光発電に良くある「誤解」を、5つほどピックアップして書いていきたいと思います。

太陽光発電は環境に優しい

太陽光発電は環境に優しい発電方法」と、こういう漠然としたイメージを持たれていた方は、確かに多いと思います。しかしこの工場電気ドットコムのコラムページでも何度か書きましたし、また上の記事にも書かれていますように、太陽光パネルを大量に設置するために、森林などを切り開いて原野にしてしまうような事が起きてしまっています。これでは環境に優しいわけがありません。また太陽光パネルに有害物質が使われている、という事実もあります。実際に総務省が、「太陽光発電設備の廃棄処分等に関する実態調査 <結果に基づく勧告>」という資料を出しているくらいです。

太陽光発電は、確かに発電をする際には温暖化ガスなどを排出しないのですが、そのパネルの接地や処分などにおいて、環境を破壊してしまう可能性が十分にあります。

原子力発電に代われるくらいに発電量が多い

2011年の福島原発事故以来、日本各地の原子力発電所は稼働を停止し、太陽光発電などに取って代わられるようになっている、という現状があります。ですので、太陽光発電で今まで原子力発電で発電していただけの電力を補えている、と思われている方もいらっしゃるかもしれません。しかし太陽光発電の発電量は、原子力発電に遠く及びません

上のページでは、原子力発電所一基が年間で発電するのと同じ量を、太陽光と風力発電で作り出すには、どれくらいの設備が必要か、という表が掲載されています。それによると、太陽光発電の場合、太陽光パネルがおよそ190万基も必要である、という事がわかります。190万もの太陽光パネルを設置するのは、それこそ上に書いたように森林などを伐採して、広い原野を作らないと無理でしょう。つまり太陽光発電では原子力発電での発電量には、遠く及ばないという事なのです。

では原子力発電所が稼働を停止している今、電力が足りているのはどうしてかというと、それは火力発電所をフル稼働させているからです。また厳密にいうと電力が足りるか足りないかが、とても微妙なラインにあります。どこかの火力発電所が一箇所でも事故などで停止してしまえば、また計画停電などを行うことになってしまうかもしれません。

安く設置できる

現在の一般家庭における太陽光パネルの設置費用は、もちろん様々な条件で変わってきますが、およそ200~350万円前後が相場だといっていいでしょう。これを高いと取るか、安いと取るかは人それぞれです。もちろん電気代を払う必要はほぼ無くなりますし、また余った電気を電力会社が買い取ってくれる制度もあります。そう考えると、いずれ元は取れるかもしれません。

しかし太陽光パネルには、当然定期的なメンテナンスが必要です。また太陽光パネルの重みで、屋根が崩れてしまう可能性もあります。そうした様々なリスクを考えたうえで、安いか高いかを判断するしかありません。なのでそう簡単に「太陽光パネルは安く設置できる」とは断言できないはずです。

夜でも発電できる

ごくたまにですが、「太陽光パネルの営業の方などが『太陽光パネルは夜でも発電可能です』と言っていました」という話を聞くことがあります。しかし太陽光パネルは、当然のことながら、太陽光で発電をするので、太陽光が出ていない夜には発電できません

あるいはもしかしたら、その営業の方は「昼間太陽光で発電した電気を、夜に使うこともできます」と言いたかったのかもしれません。もちろん昼間のうちに発電した電気を夜に使うこともできますが、そのためには電気をためておく蓄電池などが必要となってきます。これもやはり、蓄電池設置の費用などを計算して、設置しても損をしないかどうかをあらかじめ計算しておく必要があるでしょう。

夏の発電量が一番高い

太陽光パネルは太陽の光を利用して、発電をします。という事は、太陽の光が強い夏であれば、一番発電量が多くなるのでは無いか。確かに理屈としては、正しいですね。しかし実はこれも誤解なのです。

こちらのページに書かれていますが、実は太陽光パネルは「温度が低くなると出力が上がり、高温になると出力が下がる」という特性があります。つまり、あまりにも暑いと十分に発電ができない、という事です。

リンク先の表を見る限りでは、太陽光パネルはおおよそ25度で100%の発電量となります。そこから温度が下がるほど、出力が増えていき、逆に温度が上がるとどんどんと出力が落ちていってしまうのです。25度は大体5~6月前後の気候ですから、真夏にどんなに太陽光が強くても、十分な性能を発揮できないということになるのです。特に今年のような酷暑の場合、余計に発電出力が下がってしまうでしょう。

温度が低い方が太陽光パネルの出力が上がる、ということは北の方の涼しい地域では、太陽光パネルはその性能を十分発揮する、と思われるでしょうが、そういった地域では今度は雪が積もりやすいという問題があります。太陽光発電は、なかなかに気難しいシステムだと言うことが出来るでしょう。

まとめ

今回は太陽光発電に関する誤解、という事で書いてきました。いかがだったでしょうか?皆さんの太陽光発電へのイメージが、かなり変わったのでは無いかと思います。

もちろん太陽光発電が全く役に立たない、という事を言いたいのではありません。太陽光発電の特徴を正しく理解し、その性能を正しく発揮することが大事という事です。それは太陽光発電に限ったことではありません。原子力発電でも火力発電でも水力発電でも、なんでもそうです。特に自然エネルギーは、その地域によって向き不向きが特に大きいです。単純に「環境に良さそうだ」というイメージだけで判断しないで、色々と調べて正しい知識を身につけることが、大事なのですね。