原子力発電には「原子炉」が必要になります。この原子炉は、原子力発電の要とも言える部分になります。原子炉内に燃料となるウランをいれ、その核分裂により発生した熱を利用して、水を沸騰させてタービンを回して発電をします。この原子炉には「軽水炉」「重水炉」「高速増殖炉」など、いくつかの種類があります。「軽水炉」は冷却水に普通の水を利用します。「重水炉」では冷却水に重水を利用しています。そして現在世界で最も多く利用されているのが「軽水炉」という種類です。
しかし東京電力福島第一原発事故などの影響もあり、この原子炉の安全性をより高める必要が出てきました。そして近年開発されたのが「高温ガス炉」です。
高温ガス炉はその材料に、熱に強い炭素やセラミックが用いられます。そのため通常の原子炉よりも熱に強く、1000℃以上でも耐えることができます。また核分裂で生じた熱を冷やすための冷却材として、軽水炉では水が利用されますが、高温ガス炉では高温に耐えるヘリウムガスが利用されます。そのためもし万が一炉が冷却機能を失ったとしても、燃料は溶け出したりせずに、自然に冷えていく仕組みとなっています。この安全性こそが、高温ガス炉の最大の特徴となっています。
高温ガス炉のメリットは安全性だけではありません。従来の原子炉ではせいぜい300℃程度の熱しか利用できなかったのですが、高温ガス炉では1000℃近い熱を利用することができます。つまり従来よりも熱効率がより優れているということになり、発電効率も上がるということになります。より大量の電気を発電できる、という事になります。
そしてこれも大きなポイントなのですが、原子力発電では実は二酸化炭素が発生しません。火力発電では燃料を燃やした際にどうしても二酸化炭素が発生しますが、原子力発電ではそれが無いのです。実は原子力発電は「脱炭素」という面からは、実に理想的な発電方法なのです。高温ガス炉は菅首相が提言した「脱炭素社会」の実現に向けて、非常に大きな足がかりとなる事は間違いないでしょう。
現在高温ガス炉が稼働しているのは、世界では日本と中国のみとなります。この技術を発展していくことが出来れば、日本のエネルギー政策にも大きな影響を与えることとなるでしょう。もちろん脱炭素社会の実現にも大きく役立つことは間違い有りません。