電力自由化のおかげで、工場や町工場、オフィス、ビルディングだけでなく、一般家庭でも電力を安くすることが出来るようになりました。そんな電力自由化ですが「常時バックアップ」という仕組みをご存知でしょうか?今回は「常時バックアップ」についてご説明してまいります。
常時バックアップとは?
さて「常時バックアップ」とはどういう仕組なのでしょうか?電力自由化が進み、多くの新電力会社が電気事業に参入してきました。しかしそうした新電力会社の中には、まだ安定して電気を調達できなかったり、発電量が少ないために契約している全ての消費者分の電気を用意できなかったりする事があります。もし契約している新電力会社が電気を用意できないという事態になったら、一体どうなってしまうのでしょう?まさか家や会社や工場が、一斉に停電になってしまうのでしょうか?
そうした事態に陥った時に、各消費者のところにも電気がキチンと送られてくるようにする制度が「常時バックアップ」です。新電力会社にトラブルが発生して電気が送れなくなった場合など、地方電力会社から各家庭やオフィス、工場などに電気を回してもらえる仕組みです。ですのでもし新電力会社自体に何かあっても、自分の工場が停電になってしまい作業が出来なくなってしまうという事はありません。安心ですね。
まとめると、「常時バックアップ」とは、新電力会社を地方電力会社が常にバックアップしてくれる体制のことです。この仕組があるおかげで、新電力各社は安定した電気を、消費者に対して届けることができます。
この「常時バックアップ」ですが、新電力会社に何かあった場合の電力のバックアップはもちろん、地方電力会社が新電力会社に対して、正当な理由なく電気の供給を制限したりしないようにも、取り決めがされています。
常時バックアップのメリット
このように地方電力会社が新電力会社を常時バックアップすることのメリットですが、もちろん一番はなんといっても、消費者に安定した電力が送られるという事でしょう。消費者にとっては、安定して電気が送られてくることが、何より一番大切なことです。
それ以外には、常時バックアップがあることで、新規の新電力事業者が電気事業に参入しやすくなる、というメリットがあります。当たり前のことですが、新電力会社は最初はどこも電気に関するノウハウは持っていません。経営を進めながら電気に対するノウハウを蓄積していくわけですが、全くノウハウが無い新規事業者でも電気事業を行えるようにする、というサポートの意味合いも持っています。そうして大手電力会社からサポートを受けながら、電気事業のノウハウを蓄積していけばいい、という理屈です。そうして新しい電気事業の会社が参入することが、結果として電力の自由化をうながし、より電気代が安くなることに繋がっていくわけです。
常時バックアップのデメリット
一方常時バックアップのデメリットですが、そうしたバックアップに頼りすぎてしまう事で、新電力会社自体の力が落ちてしまうのではないか、という懸念があります。正直私たち消費者には直接関係ないような気もしますが、長い目で見た場合、有力な新電力の会社が出てこないと、結果として市場が育たず競争も廃れてしまい、また地方電力会社による独占市場となってしまう可能性があります。そうなると、せっかく安くなった電気料金がまた値上げしてしまう…という可能性も考えられますね。
実際、いずれは電力の常時バックアップの仕組みは廃止され、その代わりとして電気を自由に卸取引していく卸電力市場を発展させていこう、という方向になってきているようです。しかしこれもまだしばらくは先の話。もうしばらくの間は、常時バックアップにお世話になるようですね。
まとめ
電力の「常時バックアップ」について、お分かりいただけたでしょうか?私たちにとっては、安定して電気が使えることはとてもありがたいのですが、その裏で各電力会社が努力をし、助けあっているという事実があります。一番いいのは、各電力会社が力をつけ電力市場が大きくなり、様々な電力会社が自由な競争を広げていくことでしょう。それが私たち消費者にも業界にとっても、理想的な展開だと思います。
こうした流れを見ると、電力自由化はまだまだ始まったばかりだという事を再認識させられますね。