安全性を追求した最新型の原子力発電とは?

昨今の原油・天然ガスの値上がりに伴っての電気代高騰を見て、さすがに今の火力発電では限界がある、と思われている方も大分増えてきたかと思います。その一方で、ではすぐに原子力発電に戻りたいか?と言われると、やはり東京電力福島第一原発事故を経験しているために、すぐには「はい」と言えない方も多いのでは無いでしょうか。その気持ちは、正直良くわかるところではあります。

しかし東京電力福島第一原発事故からもう11年が経過しました。その間技術も進んでおり、以前よりはるかに安全に利用できる原子力発電が、いくつも開発されています。

経済産業省資源エネルギー庁:原子力にいま起こっているイノベーション(前編)~次世代の原子炉はどんな姿?

「原子力」には、みなさんもご存じの発電だけではなく、医療、工業、農業、科学などさまざまな用途があります。では、これらの用途において求められている「革新的な原子力技術」の姿とはどのようなものなのでしょうか。

代表的なもののひとつが、「小型モジュール炉」です。SMR(Small Modular Reactor)とも呼ばれ、世界各国で開発が進められています。その特徴をキーワードであらわすとすれば、「小型」「モジュール」「多目的」の3つがあげられます。

原子炉を「小型」にすると、大型の原子炉よりも冷えやすくなります。技術的に言えば、小型炉は体積の割に大きな表面積をもっているために起こる現象なのですが、たとえて言うなら、「同じ運動をしても子供や痩せている人のほうが体温を外へ逃がしやすい」というイメージでとらえればいいでしょう。この特性を突きつめていくと、原子炉に水をポンプで入れて冷やさなくても自然に冷えてくれる、といったことも可能になります。実現すれば、安全性が高まるうえに、原子炉全体を簡単な構造にすることができ、メンテナンスもしやすくなります。その結果、コストの削減ができ、経済性も向上する可能性があります。

リンク先には最新技術を利用した、新しい原子炉がいくつか紹介されています。例えば従来の原子炉よりも遥かに小さくなっていて、安全性をより高めた物。また構造を単純化し、建設と運転のコストを今以上に高めた物。冷却に空気を利用することで安全性をより高めた物など、実に多種多様です。もちろんここに紹介されている以外にも、まだまだ新しい原子力発電技術が研究・開発されている事は、いうまでもありません。もちろんこうした新しい原子力発電で全く事故が起こらないか?と言われるとゼロには出来ないと言わざるを得ませんが、事故が起きる可能性をより少なくして、またもしも事故が起きたとしても小規模で済むように工夫がほどこされています。現状のような火力発電をずっと使い続けるよりは、より低リスクだと言えるでしょう。

発電には安全性と効率性が常に求められています。そしてその研究も日進月歩です。そうした現実を見ないで、ただ感情的に原子力発電を拒否しているだけでは、いつか行き詰まってきてしまう時が来るでしょう。