いままで様々な発電方法を紹介してきました。火力発電、水力発電、原子力発電、太陽光発電、風力発電、地熱発電、バイオマス発電…などなどです。今回ご紹介する発電方法は、波力発電です。つまり「波」を利用する発電方法です。
波力発電の仕組み
では波力発電の仕組みを見ていきましょう。波力発電とはその名の通り、海の「波」を利用した発電方法です。「波」を利用するといっても、実はその方法は様々です。一つずつ見ていきましょう。
振動水柱型
波力発電でもっとも広く利用されている方法です。発電装置の中に空気室と呼ばれる箇所があり、その中に波のエネルギーで海水が流れ込むような仕組みになっています。その際に押し出された室内の空気が風となって、タービンを回して発電をする、という方法です。
可動物体型
振り子式に動く物体を設置します。その物体に波を当てることで動かし、その運動エネルギーを使ってモーターを回転させて、発電をする方法です。
越波型
この方法は、まず防波堤をつくり、その手前に貯留地を作っておきます。大きな波が発生し、それが防波堤を越えてきた水を貯留地にためておきます。その水が引波にあわせて海に戻る際のエネルギーで、タービンを回して発電するという方法です。
ジャイロ式
近年考えられた、新しい発電方法です。ジャイロ(コマ)のように高速で回転する円盤を、巨大な浮きの上に起いて海に浮かべます。このジャイロは波に揺られるのですが、その際に「ジャイロ効果(コマが勢いよく回っている時に傾けると元に戻ろうとする力)」によって、ジャイロをまっすぐに保とうとする力が働きます。この回転運動を利用した発電方法です。波で揺らすだけで発電が出来るので、効率よく発電が出来ると期待されています。
また近年では上記以外の新しい波力発電方法も考案されています。これらが実現すれば、さらに波力発電がより身近になってくるでしょう。
波力発電のメリット
さて波力発電には、どんなメリットがあるでしょうか。
まずなんといっても、エネルギー効率が高いといことが挙げられるでしょう。実は面積辺りの発電量で比べた場合、太陽光発電の約20~30倍、風力発電の約5~10倍の発電効率があります。
また波というものは風力や太陽光に比べて発電量にムラがありません。波が全く無い、という状況は実はほとんど無いためです。
それに日本は海に囲まれているため、波の力を利用しやすい地形です。例えば離島であっても、波力発電を利用することが可能だということです。
まとめると波力発電は、発電効率が良くかつ安定した発電量が期待できる発電方法である、ということです。
波力発電のデメリット
では今度は波力発電のデメリットを見ていきましょう。
まず考えられるのが、設置のコストが高いということです。他の発電方法は陸地にも設置できますが、波力発電はどうしても海のそば、それも波が利用できるくらい海の近くに建設しないといけません。それだけでかなりコストがかかります。また設置したあとも、波による侵食や様々な海洋生物の付着などがあるので、維持管理のコストも多くかかります。
また波の力を利用するのはいいのですが、例えば台風の時などの大波や地震の時などの津波対策をどうするか、というも問題もあります。波力発電は構造的に波を受けざるを得ないので、どうしてもこれら災害対策が必須になり、その分のコストもかかってしまいます。
それから波力発電はある程度波が発生しやすい所に作る必要があります。つまり海流などがそばにある所への設置が望ましいのですが、実はこれは言い換えると、漁場のそばに設置しないといけないという事でもあります。そうなると近隣の漁業関係者とも調整をつけないとなりません。この辺りも多くの問題が予測されますね。
まとめ
波力発電は、島国日本ならではの発電方法だと言ってもいいでしょう。周囲を海に囲まれているため、24時間365日波の力を利用できるという事に他なりません。とはいえ、大規模に実用化するには、まだまだ多くの問題をクリアしていかないといけないのも、また事実です。波力発電をどのように実現化していくのか、今後の研究が期待されますね。