最悪の事態「停電」は回避!電力逼迫の原因とは?

昨日22日は電力不足により大規模停電が起きるのでは無いか?と懸念されていました。しかしギリギリの所で停電は回避できたようです。今回の危機回避に尽力した全ての方々に感謝したいと思います。

impress Watch:22日夜は停電回避。東電管内は23日も需給ひっ迫継続

経済産業省は、東京電力管内・東北電力管内における22日夜の停電回避に目途がたったと発表した。

真冬並みの寒さになった22日は、低気温による暖房需要増と、6日の福島県沖の地震による火力発電所停止の影響で、初の需給ひっ迫警報が東京電力管内と東北電力管内に出された。企業や家庭の節電への協力などで、ひとまずは停電の危機は回避されたこととなる。

需給の厳しい状況は続くため、節電の継続を要請しているが、「寒さの厳しい中、ご家庭で、また職場で、多くの方に節電の工夫をしていただいたことに感謝する」としている。

しかし今日23日も、まだまだ電力需給ひっ迫警報は続けて出ています。一体どうしてこんなに電気が不足してしまっているのでしょうか?

そもそも電気が足りていない

まず大前提としてなのですが、電気が不足しているのは実は今回に限ったことではありません。もう10年以上も電力不足状態が続いており、そこをなんとか綱渡りで回避していたのです。

Yahooニュース:【図解】全国の原発の状況(再稼働、廃炉、停止中など)

資源エネルギー庁によると、2022年2月現在、日本国内で再稼働している原発は、関西電力大飯原発3号機や高浜原発4号機など10基(定期検査で停止中も含む)です。

原子力規制委員会の新規制基準に適合していると判断されたものの、まだ再稼働していない原発は、東京電力柏崎刈羽原発6号機、7号機や東北電力女川原発2号機など7基。審査中の原発は北海道電力泊原発1、2、3号機など10基です。

廃炉や廃炉の方針が決まっている原発は、前述の福島第一原発や中部電力浜岡原発1、2号機など24基(事故前から廃炉が決まっていた原発も含む)です。

福島第一原発事故後に原発の運転期間を原則40年とするルールが定められました。1回に限り、20年を超えない範囲で延長が認められていますが、40年超の原発は高浜原発1号機、2号機など4基あります。

リンク先に詳しい図がありますので見ていただければ分かるのですが、現在日本にあるほとんどの原子力発電所が、稼働を停止してしまっています。特に東北・関東地方では、現在稼働している原子力発電所はありません。そもそもの発電量自体が10年以上前よりもずっと少ないのです。

その穴を埋めるためにも、既に取り壊しなどが決まっていた火力発電所を、半ば無理やり動かして電気を補っていたというのが現状です。

3月16日に発生した地震の影響

しかしこのタイミングで最大震度6強を観測する、大地震が発生してしまいました。3月16日深夜のことです。この地震により震源近くにあった相馬共同火力発電の新地発電所や、東北電力の原町火力の設備が損壊してしまいました。結果として発電することが出来なくなり、ただでさえ電力不足なのに、残りわずかな電力も減らされてしまうことになったのです。これが第二の原因だと言えます。

気温の低下と悪天候

そして第三の原因が気候です。御存知の通り、昨日3月22日は大変温度が下がりました。場所によっては雪が降ったところもあるかと思います。気温が下がって寒くなれば、当然ですが暖房が必要になります。しかし各家庭やオフィスで一斉に暖房需要が増えると、当然ですが電力需要もそれに伴って一気に増えます。こうなると、供給が少ないのに需要がそれを上回ってしまい、受給バランスが崩れてしまいます。大停電がいつ起きても不思議では無くなります。

また天気が悪かったことで、太陽光発電が全く役に立たなかったことも原因の一つです。通常であれば昼間は太陽光発電が発電をして、ある程度の電力供給を補ってくれるのですが、昨日のような天候では、それは全く期待できません。風力発電であればある程度の発電は期待できるでしょうが、それにしても焼け石に水なのは変わりません。

以上の3つの要員が重なって、今回の電力逼迫危機になったと言えるでしょう。

今回のような危機はまた起きるのか?

今回は無事に大停電の危機を回避することが出来ました。しかし今後また同じような危機がいつ訪れるかはわかりません。相馬と原町の火力発電所については、いずれ修理が終わるかもしれませんが、そもそも損壊した原因が地震なので、これはいつ起きるか全く予想がつきません。もちろん地震が起きても大丈夫なように設備を新しくしておくことは必要ですが、その準備が終わる前に地震が起きないという保証は、全くありません。

天候についても、基本的には予想不可能だと言えます。ある程度短期の予想であればつきますが、予想がついたところで、例えば大寒波の襲来を防ぐことは、現在の科学力では不可能です。また冬のみならず、夏も冷房などで電力需要が一気に増えます。今回のような電力不足が次は夏に起きるかもしれない、ということです。

そう考えていくと、今回のような電力危機を防ぐためには、結局そもそもの発電量を増やしていくことしかありません。単純に増やすといっても、太陽光や風力などでは自然災害の時などに発電が思ったように出来なくなる、という弱点もあります。また新しく火力発電所を新設するにしても、昨今の原油・天然ガスの値上がりなどを考えると、電気代という面からはなかなか難しいといえるでしょう。結局今ある原子力発電所を再稼働する、のが一番手っ取り早いと言えます。

起きるかもしれない電力危機にどう備えるか?

一番手っ取り早いと書きましたが、じゃあ早速原子力発電所を再稼働しようと言っても、すぐに動かせるわけではありません。もう10年も稼働を停止していたのですから、当然点検やメンテナンスなどが必要になります。おそらく数ヶ月はかかるでしょう。その間にまた同様の電力不足が起きないとも限りません。また福島第一原発事故のような事故を再び起こさないためにも、安全対策を十分に取る必要があります。

もちろん原子力発電を再稼働させればそれで全部収まるわけではありません。太陽光発電や風力発電は確かに天候によって発電量が左右されますが、それでも多少なりとも発電効率を上げる方法を模索していかないとなりません。またその他の再生可能エネルギーも、研究・発展させていく必要があります。原子力にしても、現在の方法とは違って災害に強いより安全な方法を、研究していく必要があります。いずれにしても、年単位で考えていかないとならない事です。

もちろん今回の電力不足も、まだ完全に回避されたわけではありません。電力逼迫は今日23日もまだ続いています。大量の発電が見込めない限りは、可能な限りは節電をしていかないとなりません。今回の経験を踏まえて、どうすればより安定して安全な電気を作り出すことが出来るのか、私達自信が考えていく必要があるのでは無いでしょうか。

(2022.03.23 10:40追記)

電力需給ひっ迫警報に関しましては、午前11時に解除されるとの発表がありました。節電にご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。

NHK NEWS WEB:東電管内「ひっ迫警報」午前11時に解除 電力安定供給にめど

政府は、東京電力管内に出していた「電力需給ひっ迫警報」を午前11時に解除すると発表しました。
節電の呼びかけによって電力の需要が抑えられていることなどから安定供給できるめどがたったためとしています。
一方、今月16日の地震の影響で、一部の火力発電所は運転停止が続いていて、政府と東京電力は効率的な電気の使用を呼びかけています。