日本の石炭火力発電は実はスゴかった

COP26、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議が先日閉会いたしました。結論としては、石炭火力発電は全廃になるのでは無く、段階的に削減していくという事になりました。異論はあるかもしれませんが、これ自体はかなり妥当な結論だったと思います。そして日本にとっては、実はかなりいい結果だったのでは無いでしょうか。

今回採択された文書には「排出削減対策が取られていない石炭火力発電の段階的な削減の努力を加速する」と書かれています。つまり排出削減対策が取られていれば、石炭火力発電でもそのまま続けても大丈夫だ、という事になります。

しかし排出削減対策が取られていない石炭火力発電というのは、ちょっと想像がつかない方もいらっしゃるかもしれません。私達の考える石炭火力発電は、文字通り石炭を燃やして火力発電を行う代わりに、大量の温暖化ガスを排出します。煙突から大量の黒煙が出ている映像を思い浮かべた方も多いでしょう。しかしいまやそうした「煙突から大量の黒煙を出す火力発電」は、過去の物となっています。

Zakzak:実はスゴい日本の「石炭火力発電」 発電効率の向上と低炭素化、最高水準の微粒子燃焼方式 識者も「世界が日本頼みになるのでは」の見方

電源開発(Jパワー)では、老朽化した石炭火力発電所の順次フェードアウトを検討する一方、石炭とともにバイオマスやアンモニアを混焼することで発電効率の向上と低炭素化を図っている。

昨年6月に稼働した最新鋭の竹原火力発電所(広島県)新1号機は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱効率が48%。石炭を微粒子に粉砕して燃やす方式では世界最高水準だという。

「効率を上げることで少ない量の石炭で済み、CO2排出量が少なくなる。石炭の代替のバイオマスなどを入れれば、さらに排出量を減らせる」と同社広報部は説明する。

中略

国内の電源構成に詳しいユニバーサルエネルギー研究所の金田武司代表は、「日本の石炭火力発電には、世界最高水準のガス化技術や高効率の発電技術の蓄積があり、CO2排出減にも貢献している。発電所のプラントも造船など多分野の技術の結晶で、脱炭素の最終局面でも、日本の技術が生かせるのではないか」と指摘する。

現在日本ではほとんどの原子力発電所が稼働を停止しています。そうした状況で石炭火力発電までも止めることになってしまっては、大規模な電力不足が起きてしまい大パニックが起きてしまうでしょう。そのため石炭火力発電の研究が、盛んに進められています。そうした中で、温暖化ガスの排出を減らすような研究もなされているのです。

こうした新しい技術が開発されている中で、「石炭火力発電は全て廃止する」と言われてしまうのは、非常にマズイ事だというのがお分かりいただけるかと思います。たとえ石炭火力発電であっても、温暖化ガスの排出量が少なくなるのであれば、それは有効活用するべきです。エネルギーの問題で一番ポイントとなるのは、どれか一つの手段に頼り切らないようにすることです。例えば原子力発電所ばかりにのみ依存してしまうと、何か事故があって原子力発電所を全て停止しないといけなくなった時に立ち行かなくなります(ちなみにこれが現在の日本です)。これは原子力発電でも再生可能エネルギーでも同じです。何か一つのエネルギーに集中的に依存するのは、大変危険なのです。選択肢は常に多く持っていた方が、結局リスクは少なくなるといえるでしょう。

温暖化ガスはもちろん減った方がいいですし、是非とも減らしていくべきでしょう。ただそのために私達の生活が犠牲になるような事があってはいけません。多くの人が安定して大量の電気を使うことができるレベルの発電量を維持しつつ、新しい発電方法、より温暖化ガスを出さないような方法を模索・研究していくことこそが、求められているのでは無いでしょうか。