世界中の電気を太陽光発電だけで供給する事が出来るのか?

つい先日、インターネット上で以下のページが話題になっていました。

BUZZAP!:全世界の電力を太陽光発電するのにどれくらいの面積が必要かひと目で分かる画像

アフリカのサハラ砂漠の上に描かれた3つの赤い正方形。これが左から全世界の電力、EU25カ国の電力、ドイツの電力をそれぞれ賄うために必要な太陽光発電パネルの面積です。

リンク先を見ていただくと、サハラ砂漠の上に赤で正方形が描かれています。もしも書かれているようにこの正方形の広さだけで全世界の電気を供給することができれば、これほど素晴らしいことはありません。火力発電所や水力発電所、原子力発電所などは一切必要無い、という事になります。

しかし、実はこの記事にはカラクリがあります。

この方が既に指摘されているように、元々は全然違う内容の研究だったものが、どういうわけか「全世界の電力を太陽光発電するのにどれくらいの面積が必要か」という内容であるとされて、作成された記事だったようです。また出典元の間違い以外にも、色々と問題があるのも確かです。

例えば本当に世界中の電力を太陽光パネルだけで供給しようとしたら、出力の問題からいって、この面積では足りないことは確かです。実際にそれだけの電気を一箇所で発電することが出来たとしても、世界中へ送電するための仕組を考えないといけません。そして送電は長距離になればなるほど効率が悪くなり、電圧が下がってしまいます。つまりアフリカで発電した電気を日本で利用するには、どんなに長い送電線があったとしても、途中で電圧が下がってしまうので、ほぼ無理だと言えるのです。

またご存知のように、太陽光発電は夜中や雨天時には発電不可能です。もちろんサハラ砂漠であれば雨の可能性は、限りなく低いでしょうが、夜は24時間の内には、どうしても来てしまいます。どこか一箇所の太陽光パネルだけで世界中の電気を供給しようとするのであれば、そこが夜のときの代替手段を講じないとなりません。

メンテナンスの問題も考えなくてはなりません。太陽光パネルにもメンテナンスが必要ですし、耐用年数が過ぎたパネルは、廃棄をしないといけません。そして太陽光パネルに含まれている有害物質が、近年では問題になってきています。それだけ広大な広さに太陽光パネルを設置するのであれば、それら有害物質の処分方法も考えないといけないでしょう。

確かに全世界の電力を太陽光発電で供給することができれば、素晴らしいことだと思います。しかしそれの実現は、現実的にはほぼ不可能だと考えていいでしょう。現在の日本で主力となっているのは「電気の地産地消」という考えです。その地域で発電した電気を、その地域で消費する、という考えです。これであれば送電の際のロスを考えなくていいので、電気が有効活用できますし、またその地域の特性をいかした発電方法が利用できます。

確かに原子力発電は、日本では大きな事故が発生してしまった事もあり、嫌われてしまっています。しかし現実問題を考えると、まだまだ原子力発電所には頼らざるを得ない状況だと言えるでしょう。その証拠の一つが、近年の度重なる電気代の値上げでしょう。電気代に含まれている「燃料調整費(火力発電のためのエネルギーの購入費用)」が増えているのが、電気代値上げの要因の大きな原因の一つです。もし現在稼働停止している多くの原子力発電所が動き出せば、この「燃料調整費」もたちどころに下がっていくことでしょう。

電気の問題は、私達の生活に関わってくる実に現実的な問題です。であればこそ、現実的に考えていく必要があります。確かに理想も必要ですし、様々な議論がなされる事はいいことなのですが、現実を見据えた、地に足の着いた議論が必要なのでは無いでしょうか。