太陽光発電の意外な弱点とは?

太陽光発電については、すでにこの工場電気ドットコムのコラムでも幾度となく書いてまいりました。一時は「環境に優しいエコなエネルギー」としてもてはやされた太陽光発電ですが、この数年でその評価はガラリと変わったと言っていいでしょう。

雨天や曇天、夜間などには発電が出来ないので、安定した電力は供給できない。台風などの暴風が来ると、太陽光パネル自体が飛んでいってしまう。飛んでいったパネルが他の家の窓ガラスや壁をつきやぶるなど、大きな被害をもたらす可能性がある。パネルの材料に有害物質が含まれていて、処分に手間がかかる。などなどです。もちろん太陽光発電にはメリットも多くありますが、同時にこうしたデメリットも、大量に存在いたします。

そんな太陽光発電の意外とも言うべき弱点をご存知でしょうか?実はそれは「雑草」です。

西日本新聞:「本当に頭が痛い」太陽光発電、6割が雑草に悩む 草刈り、間隔が空きすぎれば木や竹も伸長

太陽光発電の最大の悩みは「雑草」―。九州経済調査協会が太陽光発電事業者に実施した調査で、約6割の事業者が雑草対策に頭を悩ませていることが分かった。伸びた雑草が影になると、発電効率が落ちる。九州をはじめ各地で急速に広がった太陽光発電だが、その維持管理が課題となっている。

中略「草刈りは本当に頭が痛いんですよ」。福岡県や宮崎県で太陽光発電事業を行うグリーンコープ生協設立の電力事業者「グリーン・市民電力」の大橋年徳さんは語る。

発電所では、毎年夏から秋にかけて2~3回の草刈りが欠かせない。間隔が空きすぎると、雑草だけでなく、樹木や竹までもが伸びてくることがある。枝などが太陽光パネルに当たって故障させることもあるという。

一般的に太陽光発電所は敷地が広い上に、植物の生育にとっては日光がさんさんと降り注ぐ最適の環境だ。これまでシルバー人材センターへの委託や、大橋さんや社員らが作業で草刈りを続けてきたが、楽な作業ではない。「草が生えてくるのを抑える防草シートを張ることを検討している」と言う。

一般のご家庭の屋根上にあるような太陽光パネルでしたら、雑草の心配はありません。しかし地面に直接置くようなタイプの太陽光パネルでは、雑草が悩みの種なのです。雑草が生えてくることで太陽光パネルを遮り、発電効率が落ちてしまいます。太陽光パネルの真下から竹でも生えてくれば、パネル自体を損傷してしまう恐れがあるでしょう。

太陽光パネルが雑草に弱い」という話は、ここで急に出てきた話ではありません。以前から指摘され対策を施されてきた話でもあります。

スマートジャパン:急増する太陽光発電の「雑草トラブル」、知っておきたいリスクと対策

その中でも、近年問い合わせが増えているサービスの1つが、「雑草対策」です。発電事業者、O&M企業、EPC企業の方から、雑草対策、雑草による発電事業の阻害、および近隣・地域への対策、土砂流出対策、法面崩落対策などの質問・相談を受けるケースが急増しています。

その中で、われわれに相談が寄せられる雑草対策に関するトラブル・懸念内容のベスト10は、以下の通りです。

1:草刈り回数が増えて予算オーバーになっている
2:年々雑草が増え、発電量への悪影響が増えている
3:地域から景観が悪いと苦情が出ている
4:防草シートを敷いたが、数カ月で多くの雑草が生え、効果がない、景観が悪い
5:除草剤を散布して、全ての植生を枯らしてしまった結果土砂が流出してしまった
6:草刈機でケーブルを切断・バックシートを傷つけて事故を起こした
7:アブラムシが大量発生し、近隣の農家や住宅地から苦情があった
8:イノシシのふん臭で、稲作がだめになったので買い取ってほしい
9:種子吹き付けなどの緑化対策をしたが失敗した
10:大麻や芥子(ケシ)が植生してしまった

発電所ごとに置かれている気候・環境や設備の状況は異なるため、上記のように各現場で起こる雑草に起因したトラブルもさまざまなものがあります。寄せられる相談の中には、既にこうしたトラブルに対して専門業者に対策を依頼したものの、思っていたような効果が得られなかったという話も多くあります。稼働から数年が経過した発電所が増える中、不適切で非経済的な雑草対策に起因した、発電事業と業者間のトラブルが絶え間なく続いている状況のようです。

このように以前から、太陽光発電の雑草対策というのが問題になっていたというのがおわかりいただけたかと思います。「太陽光発電のメンテナンス」には、こういった費用も含まれてくるわけです。そう考えていくと、水上に太陽光パネルを浮かべるタイプのものは、こうした雑草などへの対策として考え出されたのでは無いだろうか?という見方も出来ますね。

いずれにせよ太陽光発電はまだまだ発展途上の発電方法です。雑草対策などのこうした問題を一つずつ解決していき、より発電効率を高めていかなければ、原子力発電の代替には到底なりえないでしょう。今後の研究成果を見守っていきたいです。