水上型太陽光パネルは救世主になりうるのか?

今年9月に日本を襲った台風15号といえばやはり千葉の広域停電を思い出しますが、実は千葉でもうひとつの事件が発生していました。その時のコラムでも少し触れたのですが、千葉のメガソーラー発電所で火災が発生したのです。

ライブドアNEWS:千葉県のメガソーラー発電所で火災 台風による強風が原因か

9日午後、千葉県市原市のダム湖にある水上メガソーラーのソーラーパネルが台風の強風で吹き寄せられ、何らかのきっかけで火災が発生した。

市原市の山倉ダムには、およそ5万枚のソーラーパネルを湖面に浮かべたメガソーラー発電所があるが、映像からは本来、規則正しく並んでいるはずのソーラーパネルが吹き寄せられているように見える。消防では台風の強風が火災の原因とみているが、消火作業のためにはソーラーバネルへの通電を止める必要があり、消火のめどは立っていない。また、市原市内ではおよそ6万5000軒が停電しているが、関連はわかっていないという。

このニュース、かなり印象に残った方も多いかと思います。何故印象に残りやすいかというと、記事中にも書かれていますが、この火災があった発電所の太陽光パネルは、5万枚全てが湖に浮かべられているのです。そのビジュアルがかなりインパクトがあったのでは無いでしょうか。

実はこの水上に太陽光パネルを置くという方法ですが、現在日本では盛んに建設が進められています。

ダイヤモンドオンライン:日本最大の「水上」太陽光発電で火災、台風で露呈した”救世主”の問題点

実は日本では今、この水上太陽光発電所が盛んだ。

2018年10月に発表された、世界銀行とシンガポール太陽光エネルギー研究所の調査によれば、水上太陽光発電の世界的な導入容量は1.1GWに達したとされている。

またソーラープラザ(オランダ)の調査によれば、水上太陽光発電規模の世界トップ100(合計246MW)のうち、50%以上が日本に集中しているという。ちなみに山倉ダムの発電所は、中国・安徽省の世界1位、2位の2つの発電所に次ぐ世界3位の規模だ。

なぜ日本でこれほど水上太陽光発電が導入されているのか。その大きな理由の1つが建設用地の少なさだ。

2012年に固定価格買取制度(FIT)がスタートして以降、爆発的に地上型太陽光発電所が増えた。そのため平地では用地を確保できなくなり、丘陵地へと建設場所が移った。ただ、森を切り開くのは環境破壊につながり、継続的な開発には限界がある。そこで白羽の矢が立ったのが水上。開発用地に限りのある日本の太陽光発電ビジネスにおいては、まさに”救世主”といえた。

こちらの記事に詳しく書かれていますが、太陽光発電、特にメガソーラーには広大な敷地が必要です。それも平地でないといけません。そのために多くのメガソーラーでは、森林だったところを切り開いたり、場合によっては山の斜面などを切り開いたりして、太陽光パネルを大量に設置しています。それが原因で環境破壊や土砂崩れなどが起きてしまっている所があるのも、確かな事実です。

しかし水上であれば「広大な平地」という条件を難なくクリアできます。更に土地の取得や造成・開発なども不要なので、コストも抑える事が出来るのです。また太陽光パネルが水上にあることで、パネル自体の発熱を抑えることができ、発電効率を上げることが出来るのです。太陽光パネルを設置する事で、活用されていない池や貯水池を有効活用することが出来るのです。

しかし当然のことながらデメリットもあります。それが「強風」です。アンカーなどで固定されているとはいえ、太陽光パネルが水面に浮いているだけです。ですので、大きな波が立ってしまうと、パネル同士が接触し破損・火災が起きる可能性があります。まさに今回の火災のような状況です。

また佐賀県にある水面に浮かべるタイプのメガソーラーが、台風に伴った水害により多く破損した、という情報も伝わってきています。

https://twitter.com/kimigayo2888/status/1176777021621358592

この水面に浮かべるタイプの太陽光発電は、上に書いたように日本でも多く導入されはじめています。まさに太陽光発電の救世主だと思われていた時期もありました。しかし昨今の日本では、台風や水害による被害が多く出ております。それに伴ってソーラーパネルが破損するなどの事故が起きない対策を取る必要があると言えるでしょう。今回の千葉の火災は、実際には5万枚ものパネルの中の数十枚だったそうですが、しかし日本では毎年のように台風が来ますので、今後同様の事故が起きないとも限りません。

太陽光発電はこれから更に発展させていく必要がある発電方法ですので、事故の原因を究明して、可能な限り再発が起きないような対策を行ってほしいところです。