脱炭素社会の切り札 小型モジュール原子炉とは?

菅首相が昨年表明した「脱炭素社会」への取り組みは、特に電気業界に非常に大きな影響を与えることになりました。もちろんそうした宣言があろうとも無かろうとも、脱炭素社会への取り組みは行われていかねばならない事ですし、実際に多くの研究が進んでいます。

しかしそうした状況で先日以来、LNG不足による「電気の不足」と「大規模停電」への懸念が続いております。これは脱炭素社会を目指す上では、なんとしても乗り越えていかないといけない課題であるのは間違い有りません。

なにしろ脱炭素社会で必要不可欠と思われている再生可能エネルギーは、実は気候の影響により発電量が大きく変わってしまいます。太陽光発電が雨や雪、そして夜間には発電できない事は、今更説明するまでもありません。風力発電も風が無い時には発電は出来ませんが、逆に風が強くなってしまうと、風車自体の耐久度の問題が出てきてしまいます。再生可能エネルギーは他にもいくつかありますが、発電量自体はそれほど多くはなりません。

そうした中で希望を持たれていたのがLNGによる火力発電だったのですが、これも御存知の通り、産出国でのトラブルなどがデメリットとなってしまい、今回のような電力不足を招いてしまう結果となりました。

そうした状況で少しでも「多くの電気」を「安全に」発電する方法が求められているのですが、ここに来て新しい発電が注目されています。それが小型モジュール炉、小型原子炉です。

GLOBE+:日本の電力会社も関心 ベンチャーが挑む「小型原子炉」の可能性

「従来の原子炉は巨大なコンクリート壁に覆われているが、我々の格納容器は直径5メートルほどだ」。SMRの上部約3分の1にあたる実物大模型の前で、発案者のホゼ・レイエスが笑った。入り口をくぐると、すぐに原子炉容器があり、数人も入れば身動きが取れない。世界で主流の加圧水型原発(PWR)の最新型に比べ、出力は6万キロワットと約25分の1で、炉心の大きさは約20分の1だ。

アメリカのニュースケール社が発明したこの小型原子炉は、今まで巨大だった原子炉を小型化して、より早くより安く利用できるようにしたものです。安全性に対して心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、先程の記事でも触れられています。

安全性も高くなるという。東京電力福島第一原発事故では、津波で外部からの電源を失い、原子炉を冷やせずに核燃料が溶け落ちるメルトダウンに至った。ニュースケール社のSMRは原子炉ごとプールに沈め、原子炉内で水を循環させて冷やす。外からの電源がなくても自動的に止まり、1カ月操作しなくても事故にはならない、というのが売り文句。

原子炉自体が小さくなったために、従来の巨大な原子炉よりもはるかに冷えやすくなっています。つまり何かあった場合にも簡単に冷やすことができるようになるという事です。そしてそれは管理のしやすさということに繋がり、当然ですがメンテナンスなどの費用も安く済むことになります。

ちなみにこの小型モジュール炉ですが、発電量はおよそ300MW(メガワット)となります。通常の原子力発電所であればおよし1GW(ギガワット)となるので、さすがに発電量ではかないませんが、小さいことを生かしたピンポイントな利用が可能でしょう。

ちなみにこの炉の大きさですが、「小型」とは言ってもそれでも7階建てのビルくらいの大きさはあります。それでも通常の原子力発電所よりは遥かに小さい規模ですので、運用もやりやすくなるでしょう。そして原子力発電なので、当然温暖化ガスなどは排出しません。

この小型モジュール炉は、現在世界各国で開発が進められています。そう遠くない未来に、この小型モジュール炉が発電の主力となる日が来るかもしれません。再生可能エネルギーを発展させることも大切ですが、まずは安定した大量の電気で、私達の生活が安定し、電気代が安くなってくれるのが一番だと言えるでしょう。