2020年に実施される「発送電分離」とは?

2016年に電気の小売りと発電が全面的に自由化され、すべての電力が自由化されました。1990年代から始まった電力自由化の流れは、ここでひとまず落ち着くことになります。しかし電力関連の改革は、まだこれで終わったわけではありません。またすぐに新しい改革が待っています。それが2020年に予定されている「発送電分離」です。では「発送電分離」とは何でしょう?
発送電分離」とは、一言で言ってしまうと「発電と送電を分離する」ことです。それでは発電と送電を分離する、とは具体的にどういう事なのでしょうか?

発送電分離とは

発送電分離とは

まず「発電」から考えてみましょう。「発電」とは文字通り、電気を起こすことです。原子力発電所、火力発電、水力発電…最近では太陽光発電などが話題になっているように、様々な発電方法が思い浮かぶかと思います。

続いて「送電」です。ちょっと聞き慣れないかと思いますが、「送電」とはつまり電気を送り届けること、送電線のことですね。発電所で発電した電気を、各オフィスや工場、各家庭に届ける仕組みが「送電」です。

この「送電」ですが、普段私たちが意識している以上に大掛かりな設備が必要です。全国にある各発電設備から電気を一旦変電所に集め、それから全国の各家庭に電気を配るわけですから、大掛かりになってしまうのは当然といえば当然です。

現在私たちが使用している電気ですが、「発電」をするための発電所も、「送電」をするための送電線なども、基本的にに全て大手地方電力会社が所有しています。もちろん電力自由化で、一部新電力会社の中で発電設備を持っているところもあります。しかし電気を送る「送電線網」は、すべて地方電力会社の所有物となってしまっています。上に書いたように、送電だけでもとても大掛かりになってしまうので、小さな電力会社では維持管理も大変だと思います。

しかしそうして送電が地方電力会社の下にある以上、各新電力会社は電線の使用量を地方電力会社に支払わないといけません。それでは結果的にいつまで経っても、電力の地方電力会社による独占状態から抜け出すことは難しいでしょう。場合によっては、自分たちにとって不利になるような新電力会社が参入してこようとしたら、そこに対して何かしらの不当な扱いなどを行う可能性だって否めません。そこで「発送電分離」を行うことで、発電と送電を完全に分離し、電力の完全自由化を進めよう、というのが「発送電分離」の意義なのです。

発送電分離のメリットとデメリット

発送電分離のメリットとデメリット

2020年に発送電分離は行われると、一体どうなっていくのでしょうか?まずはメリットから見ていきます。

メリットとしては、発送電分離が行われることで、従来大手地方電力会社が独占していた全国の送電網が、新電力会社にも自由に利用できるという所にあります。そうなると今まで新電力会社が地方電力会社に支払っていた送電網の使用料が不要になり、さらなる電気料金の値下げが期待できます。
また新しい新電力業者も参入しやすくなるため、電気事業がより活性化していくことが期待されます。

逆に発送電分離のデメリットですが、送電網が自由化され新電力会社が管理することになるものの、新電力会社には送電網を維持管理するノウハウが十分ありません。ですので送電の効率などが悪くなる可能性が考えられます。送電の効率が悪くなると、結果として電気料金が値上げになる、という事態も考えられます。また送電設備に対する投資も必要になってきますので、その分のコストが電気料金に上乗せされてしまうのでは?という懸念も一部にはあります。

まとめ

発送電分離が実施されるのは2020年なので、まだ少し時間はあります。発送電分離が行われることで、完全な電力自由化が達成されますが、そこにはまだまだ未知の問題が起きる可能性もあります。
いずれにしても、私たち消費者にとって「発送電分離」が良い方向に行ってくれることを期待するばかりですね。