火力発電の原料であるLNGが不足するこの冬に取られた秘策とは?

既に何度となく書いていますが、現在日本の原子力発電所はそのほとんどが稼働停止となっています。そうした中で再生可能エネルギーでは、安定して大量の電気を賄うことが出来ません。日本の発電はLNGや石炭などをエネルギーとする、火力発電に頼らざるを得ない状況です。しかしコロナ禍という事もあり、世界各国でそうしたLNGや石炭・石油などのエネルギーの取り合いが始まっており、価格が高騰しつつあるという事は既に書いたとおりです。まさにこの冬は昨年以上に、電気の需給が厳しい体制になっていると言わざるを得ません。

この冬の電気は「過去10年で最も厳しい見通し」

そうした中でJERAがLNGを多く確保して、エネルギー不足に備えるというニュースが入ってきました。

日本経済新聞:JERA小野田社長、冬のLNG需給「高い確率で安定」

東京電力ホールディングス(HD)と中部電力が折半出資するJERAの小野田聡社長は25日にオンラインで記者会見し、冬の液化天然ガス(LNG)需給について「相当高い確率で安定して確保できる」と話した。長期契約分と別に200万トンのLNGを確保し、在庫も従来より積み増して逼迫に備える。

電力需要が高まる2021年11月~22年3月は、追加のスポット(随時契約)調達で200万トンのLNGを確保した。中堅ガス会社の年間需要に相当する。電力需給が逼迫した前年同期は300万トンを追加調達しており、それに次ぐ規模。19年度の同期間は数万トンにとどまっていた。LNG在庫も例年は150万トン程度だが、今冬のみ自主的に170万トンに高めた。

需給が逼迫せずにJERA側に供給余力が発生した場合は、卸電力市場を通じて新電力などに電力を売る。従来は長期契約のLNG価格も考慮して入札価格を決めていたが、今後はスポット価格を反映する方針。足元の燃料需給の状況が市場にすぐに伝わる仕組みにして、将来の電力需給逼迫に備えられるようにする。

現状世界各国でLNGが取り合いになっている状況なので、実際にどこまで確保できるかは分かりませんが、こうした試みは大変ありがたいことだと言えます。電気が止まってしまっては、私達の生活や生命に大きく関わってくる問題になるからです。またLNGのみならず、石油の備蓄も放出するというニュースも入ってきています。

日本経済新聞:首相、石油備蓄放出を表明 「価格安定は経済回復に重要」

岸田文雄首相は24日午前、石油の国家備蓄を初めて放出すると表明した。首相官邸で記者団に「米国と歩調を合わせ、現行の石油備蓄法に反しない形で国家備蓄石油の一部売却を決定した」と語った。原油価格の高騰を受けて上がるガソリンの価格を抑える狙いがある。

米国の要請を受け、中国やインド、韓国、英国と協調して備蓄を放出する。同日中に詳細を明らかにする。バイデン米政権は23日、数カ月かけて戦略石油備蓄を5000万バレル放出し、関係国と協力すると発表した。

コロナの事もあり、現在は間違いなく緊急事態だと言えるでしょう。そうした時のために備えておいた物を出すのは、ある意味当然のことだと言えます。後はこれで今年の冬が記録的な寒波などに襲われないよう、祈るばかりでしょう。