工場電気ドットコムを立ち上げたきっかけ

今回は私、鈴木利尚が工場電気ドットコムを立ち上げたきっかけについて、書いていきたいと思います。

もともと私は、有限会社アムライズという営業アウトソーシングの会社を立ち上げていましたが、実は以前から新電力のお誘いは何度かいただいていました。
ですが新電力は営業が大変な上に、薄利な仕事です。ですのでお話をいただいても、ずっとお断りをしていました。
そんなあるとき、懇意にしているコンサルタントの先生から新電力のお誘いをいただきました。あまり断り続けても失礼にあたりますので、せっかくの機会ということで一先ず新電力の勉強を始めてみました。

新電力の勉強を一通り終えて、それなりの知識がついたある日、自分の携帯電話に一本の電話がありました。着信履歴を見ると、母からでした。
私の実家は、兄が父から受け継いだ木工の町工場をしています。
兄と母、時々アルバイトの人に手伝ってもらうといった程度の、小さな工場です。

母の話では、もう3か月ほど機械が遊んでおり、来月頭の支払いが難しい状況であるとのことでした。
更に既存の取引先も回りつくし、しかも人を増やしていたので今後もこちらに流れてくる仕事が減るであろうこと。
そしてそんな状況でも家賃や光熱費などの経費がどうしてもかかること。
などなど、現在の状況の深刻さを母の口から聞きました。母の声が少し震えていたのをハッキリと覚えています。

これを聞いた私は、なんとか母と兄の役に立ちたいと思いたち、まずは新規の取引先を探す手伝いをしました。知り合いのつてをたどったり、直接電話してご挨拶の機会をつくったり、とにかく奔走いたしました。
しかし、すぐに仕事が流れてくるはずもありません。それでもいくつかの会社に定期的にご挨拶をしていく中で、テスト的な仕事から誠意的にやらせていただくという形になりました。本当にありがたい事ですが、それでも正直、まだ経営の改善には程遠い仕事量でした。

このままではマズイと危機感を覚え、別の方法を考えることにしました。例えば固定経費の削減は出来ないだろうか?しかし家賃はすでに大家さんに大変お世話になっており、どうしようも出来ません。
もうどうにも打つ手が無いと思ったその時、ふと新電力の事を思い出したました。すでに新電力の勉強はしていたので、上手くすればかなりの省エネ・電気代削減になるのでは無いかと思ったのです。

早速兄に新電力への切り替えを提案してみました。
兄の工場は愛知県なので、中部電力になります。しかし電気の会社を変えるということなどを考えたこともなかった兄は、当初とても不安を口にしていました。

電気が止まったりはしないか?
ほんとに電気代が安くなるのか?
中部電力の電気でなくて、機械がちゃんと動くのか?

などなどです。

今思えば当たり前なのですが、やはり新電力に対しては誰しも同じような不安は持っていて当然です。とくに父が残してくれた工場をずっと守ってくれた兄に対して、不安があるまま電力会社の切り替えを進めるわけにはいきませんでした。

当時、私自身も実際に新電力会社の人と会ったことなどほとんどありませんでした。
そこでさらに新電力のことを勉強し、実際に新電力会社に訪問してあれこれとヒアリングを繰り返すことにしたのです。
400社以上ある新電力会社をインターネットですべて調べあげ、そのうち半分くらいは電話をかけて担当者に話をうかがいました。さらにその中の数十社とは実際にアポを取って、直接合って話をしたりもしました。

その中で、各社の割引の仕方や、新電力が決して大儲けできるような甘い仕事ではないこと、大手新電力会社がつぶれてしまった事件についてや、電気の仕入れの仕組みやペナルティなど、本を読んだりインターネットで調べたりするだけでは分からないような事まで、いろいろなことを教えていただきました。

その中で兄が懸念していた、「電気が止まったりしないか」とか「今までと違う電力会社の電気でも機械がちゃんと動くのか」という事が全くの杞憂であるという事がハッキリわかりました。
また「本当に電気代が安くなるのか」という疑問に対しても、今よりは確実に安くなるという、確証を得ることが出来ました。

そして更にリサーチを続けてようやく、兄に胸を張って勧められる新電力会社をいくつかリストアップして、再度電気代削減の提案をしてみました。私の真摯な説明に兄もようやく納得してくれたようで、中部電力から新電力会社への、電力切り替えを行いました。
結果として、年間でおおよそ1ヶ月分ほどの電気料金を削減することに成功しました。

兄の工場の電気代は一般家庭より多少多いくらいですが、それでも電気料金を払わなくてよい月が1ヶ月できたと考えれば、大成功だと言えるでしょう。

母には大変感謝されました。兄には電力切り替え後の今も、安心して電気を使用しています。停電も起きず、工場の機械も今までどおり順調に動いているそうです。

この事をきっかけに、私は新電力の提案を仕事にしようと思い立ちました。私の兄の工場同様に、経費削減で苦労されている町工場、工場があると思ったからです。兄の手伝いをしたので、そういった立場の方たちの気持ちは痛いほど良くわかります。そしてなんとかして、そんな方たちの役に立とう、と決心いたしました。

以上が私が「工場電気ドットコム」を立ち上げたきっかけの話となります。「工場電気ドットコム」をきっかけに、ぜひ皆様のお役に立てれば幸いです。