原子力発電を全く使っていない新電力を利用することは可能か?

2011年3月11日の東日本大震災からもう間もなく10年が経とうとしています。そしてそれは、東京電力福島第一原発事故からも10年が経つという事になります。あの事故で、原子力発電に対するイメージが一変された方もいらっしゃるかもしれません。

そうした方々は「もう二度と原子力発電なんか使いたくない!」と思われているかもしれません。それでは実際に原子力発電を利用しないようにする事はできるのでしょうか?例えば新電力に切り替えることで、原子力発電を全く使っていない電気を利用することが出来るのでは?とお考えの方もいらっしゃるでしょう。

結論から言うと、それは(基本的には)「出来ません」。

既に何度か書いていますが、各発電所で発電された電気は、まずは超高圧変電所に集められます。そしてここで全てひとまとめにされてしまいます。その後一次変電所や中間変電所などを通り、各家庭やオフィスなどに届くことになるのですが、その際の電気は全てまぜられてしまった電気で、「これは原子力発電所の電気」「これは太陽光発電の電気」というようには分けることが出来ません。つまり現在利用している電気には、必ず数%は原子力発電所で作られたものが混ざっているという計算になります。

では例えば独自発電所として、太陽光発電システムなどを持っている新電力と契約すればどうなるのでしょうか?それも同じことです。たとえそうした新電力に切り替えたとして、電気がその発電所から直接送られてくるわけでは、決してありません。発電所で発電した電気は、全て必ず超高圧変電所に集められます。

ところで先程「基本的には」と書きました。ということは抜け道はあるのでしょうか?まず挙げられるのが、離島などの場合。本州などから遠く離れた離島であれば、その島で発電した電気を使わざるを得ないため、原子力発電が入り込む余地はありません。沖縄なども同様に原子力発電所がありませんので、原子力で発電した電気は入ってきません。しかしそれだけのために離島や沖縄に引っ越すかどうかは、色々と検討しないといけないでしょう。また電気会社と契約をせずに独自の太陽光発電を所有すれば、これも当然コストは大変かかりますが、原子力発電所の電気を使わないということになります。とは言え、これらの方法は現実的には難しいといえるでしょう。

もっとも現在の状況では、原子力発電所のほとんどが発電をストップしています。つまり普通に電気を使っていても、原子力発電所の電気の割合は相当少ないと思っていいでしょう。また皆さんの電気代に上乗せされている再生可能エネルギー発電促進賦課金は、文字通り再生可能エネルギーを発展・促進させるための費用です。そう遠くない未来に、原子力発電所の電気を全く使わなくてもいい時代が来るかもしれませんが、それは今の段階ではわかりません。

ちなみに世界には逆に、原子力100%を売りにしている電力会社があります。それがスウェーデンの「Karnfull」です。

こうして自分の好みに応じて電力会社を自由に選べることこそが、まさに電力自由化の成果だと言えるでしょう。