太陽光発電の設置禁止区域を定めた自治体とは?

この工場電気ドットコムのコラムでも既に何度か書いてきておりますが、この数年いわゆる太陽光発電パネルのことで、様々なトラブルが表に出てきております。

これらは皆、昨年2018年9月に日本に上陸した、台風21号による被害の様子です。太陽光パネルは、強風などにとても弱い構造になってしまっています。よほどしっかり接地させないと、このように太陽光パネルそのものが倒壊・破損したり、風に煽られて飛散したりしてしまいます。もしこのパネルが人間に直撃したら…と考えるだけで恐ろしくなってしまいます。

近年太陽光パネルの設置が、急速に進められています。しかし太陽光パネルを設置するために山林を切り開いてしまった結果、山が禿山になってしまったり、またそうした森林の切り開きがが原因で土砂崩れなどが発生してしまったり、という事件なども起きているようです。もちろん先程のような、太陽光パネル自体が飛散してしまうなどのトラブルも、報告されています。またこうした太陽光パネルの設置を巡って、太陽光業者と周辺住民とのトラブルなども発生し、住民運動などに発展するケースも出てきているという話も聞こえてきます。元々「環境に優しい」を謳い文句にしていた太陽光パネルが、それを設置するために環境を破壊しないといけないというのは、なんとも皮肉な結果だと思います。

こうしたトラブルが増えてきているのは、もともとこうした太陽光パネルを設置するのに、特に基準などが設けられていなかった、という実情があります。そのために各地に太陽光パネルが、半ば安易な形で大量に乱立されてきてしまいました。しかし最近になってそうした太陽光パネルの設置に対して、全国に先駆けて一定の規制を設けた自治体があります。それは岡山県です。

山陽新聞:県が太陽光発電の禁止区域設定 施設の安全導入へ条例案まとめる

岡山県は、太陽光発電施設の安全な導入を進めるための条例案をまとめた。設置の禁止区域を設け、規定に違反した場合は施設の撤去命令などの行政処分をすることが柱。10日開会の6月定例県議会に提出し、認められれば10月に施行する。県によると、太陽光発電施設の設置禁止区域を定めた条例は都道府県では初めてという。

禁止区域は、土砂災害の危険性が高い砂防指定地など4区分で、住宅などへの設置は除く。安全性が一定程度確保できると県が判断した場合は、条件付きで知事が設置を許可する。条件は周囲に被害を与えないための防護柵設置のほか、安全対策や保守点検の態勢などを地域住民に説明することなどを想定している。

岡山県:岡山県太陽光発電施設の安全な導入を促進する条例

太陽光発電の導入は、再生可能エネルギーの普及に向けた有効策です。一方、その導入にあたっては、安全性確保や環境保全などについて、県民から不安の声が出ているケースもあります。
こうした県民の不安を解消し、安全で安心な生活の確保に配慮した太陽光発電の普及及び拡大に寄与することを目的に、「岡山県太陽光発電施設の安全な導入を促進する条例」(以下、条例といいます。)を制定しました。

この条例では、太陽光パネルの設置禁止区域が定められています。また禁止区域の外であっても「設置に適さない区域」であった場合、太陽光パネルを設置することが出来ないようのいなっています。具体的には土砂災害などが発生する恐れがある地域となります。先程も書きましたように太陽光パネルを設置するには、森林などが邪魔になります。そこで森林を切り開いてしまうと、土砂災害が特に発生しやすくなってしまいます。そうした災害を防ぐ意図があるのは間違いありません。

ここで規制されているのは、あくまでも「禁止区域」および「設置に適さない区域」のみとなります。設置に適した区域であれば、太陽光パネルを設置することは可能です。実際岡山県には、日本最大のメガソーラー、瀬戸内Kirei太陽光発電所が存在しています。

この瀬戸内Kirei太陽光発電所は、元々広大な塩田の跡地であったところに太陽光パネルを設置したものです。塩田だったところなので、元々森林などはありませんでした。また岡山はもともと「雨の少ない地域」なので、太陽光発電に適した土地でもありました。太陽光パネルもこのように設置場所をしっかりと考えていけば、決して周辺住民とトラブルになるような事は無いはずです。問題なのは、周辺住民とトラブルを起こすような、安全性を無視した太陽光パネルの設置だと言えるでしょう。

自治体による太陽光発電所の規制は、今後も進んでいくのは間違いないでしょう。しかしだからといって太陽光発電所が全く役に立たない、と考えるのは早計です。何事もそうなのですが、適した場所で適した使い方をすればいいのです。無闇矢鱈と太陽光パネルを設置する時期はもう終わり、より確実に太陽光パネルを活かす方向で考えていくべき時期が来たのだと言えるでしょう。