「新電力にすると停電が増える」という噂は本当か?

この工場電気ドットコムもスタートして、ずいぶんと時間が経ちました。その間多くのお客様にお会いして、いろいろなお話をおうかがいする機会に恵まれました。本当にありがとうございます。そうしてお話をおうかがいする中で、一部の皆様はまだまだ「新電力にすると停電が増えるんじゃないの?」という疑問をもたれている事を、まだまだ痛感してしまいます。

結論から先に言ってしまいますと、新電力にしたからといって停電が増えるような事は一切ございません。どうぞご安心ください。

ただし一つだけ誤解を招くといけないのですが、停電が「全く無くなる」というわけではありません。「ほら見ろ、やっぱり停電が増えるんじゃないか」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかしどうぞ落ち着いてお読みください。

そもそも新電力と地方電力会社は、現在全く同じ送電システムを使っています。それぞれ個別の送電システムを利用している、という事では決してありません。例えば台風や地震などの災害時に電線が切れたりして停電が発生しますが、そうした時には新電力も従来の地方電力会社も区別なく、どこの電気会社と契約をしていても全く同じように停電をするのです。大手の契約者のところだけ停電しないとか、小口の契約者のところだけ停電するとか、ましてや新電力だけが停電するとかそのような事はありません。停電は電気を使っている限りは、どこの電力会社であるかどうかは関係なく平等に発生いたします

2019年の台風15号の際に「隠れ停電」という言葉が話題になりました。これは送電網自体の切断台風から復旧したけれど、送電線から各家庭に電気を引き込む線が切れてしまい、各家庭ごとに停電が発生してしまったという状況です。これも場合によっては新電力だから停電をしているように見えてしまうかもしれませんが、あくまでも各家庭での問題であって、新電力が原因となって起きた停電ということでは決してありません

逆に家庭用太陽光発電システムなどがある家庭では、周囲が停電をしていても電気をある程度自由に利用することが出来ます。しかしこれもあくまでも太陽光発電システムを持っているかどうかという事が問題であって、新電力かどうかという事は一切関係ありません。しいていえば太陽光発電システムを導入している所では新電力の利用率が多いかもしれない、という事はあるかもしれませんが、それであれば新電力は停電に強いという話になってしまいます。

ところで上に書いた停電は災害などで送電線が切れてしまったような場合、つまり物理的な停電です。それでは例えば新電力会社自体が無くなってしまう、倒産や経営危機、などのような場合は、一体どうなるのでしょう?やはり会社が無くなってしまった段階で、電気が止まってしまうのでしょうか?

一般的に新電力会社が倒産や経営危機などで無くなる場合、あらかじめ利用者の皆さんのところに郵便などで連絡が来るようになっています。内容は「○月○日に会社がなくなりますので、電気の契約を切り替えるようにお願いいたします」といったものになるのが一般的です。ですので、新電力会社がいきなり倒産という事は、よほどの事が無い限りまずあり得ません。他の会社に切り替えるくらいの猶予はあります。

それでも万が一突然新電力会社が倒産してしまったらどうなるのでしょう?実はそのような場合でも停電などが起きないよう、地方電力会社が代わって電気を供給してくれるようなシステムがあります。そのシステムを「電力の常時サポート」と言います。この規定により、例え新電力会社になんらかのトラブルがあっても、電気が止まってしまうような事はありません。

こうした仕組みは資源エネルギー庁のホームページにも記載をされております。ご興味のある方はぜひご覧ください。

資源エネルギー庁:電力供給の仕組み

(1)発電部門 はすでに原則参入自由ですが、 (2)送配電部門 は安定供給を担う要のため、電力小売全面自由化後も引き続き、政府が許可した企業(各地域の電力会社(東京電力、関西電力等))が担当します。
そのため、どの小売事業者から電気を買っても、これまでと同じ送配電ネットワークを使って電気は届けられるので、電気の品質や信頼性(停電の可能性など)は変わりません。
なお、電気の特性上、電気の需要(消費)と供給(発電)は、送配電ネットワーク全体で一致させないと、ネットワーク全体の電力供給が不安定になってしまいます。 そのため、もし小売部門の事業者が、契約している消費者が必要とするだけの電力を調達できなかった場合には、送配電部門の事業者がそれを補い、消費者にきちんと電力が届くように調整します。

ところで停電になった場合、一体どこに問い合わせればいいのでしょうか?お住まいの地域一帯、ご近所なども停電になっているのであれば、近辺の送電線になんらかの問題が発生していることが原因でしょう。そのような場合は、管轄の地方電力会社に問い合わせてみてください。

また自宅やオフィスなどが停電をした場合は、まずはブレーカーなどを確認して落ちていないかどうかをチェックしてください。ブレーカーが落ちていなくても停電しているのであれば電気業者などに問い合わせて、来てもらった方が確実だと言えます。契約している電気会社で作業員の方を派遣してくれるサービスをしている事もありますので、そういったサービスを利用するのも良いでしょうね。

ある時代から比べると停電の数はかなり減りましたが、それでも全くゼロになったわけではありません。普段から万が一の備えとして、懐中電灯やバッテリーへの充電などを忘れないようにしておきたいものですね。