いまや世界中で脱炭素、脱温暖化の流れが急速に進んできています。しかしそうした流れになっているにも関わらず、実際に脱炭素を達成するのはまだまだ時間がかかりそうです。
日本経済新聞:2050年の石油需要、世界で4割増 米当局見通し
CO2の排出量は50年まで増え続け、現状の政策のままではカーボンゼロからはほど遠い姿となる。1次エネルギーに占める割合は、再生エネが20年の15%から50年に27%まで拡大する。石油は同じ期間で30%から28%に下がるが、需要全体が伸びるため、需要量も増える。天然ガスと石炭も同様な傾向だ。
先進国はカーボンゼロに向けて発電の脱炭素化や電気自動車(EV)の導入支援を強化している。一方、こうした政策はコスト増加につながりやすいため、人口増加と経済成長が続くアジアや新興国の多くで導入が遅れている。
この記事の分析では、新興国などの産業が発展するのに伴い石油を消費していき、それに伴い石油消費量が伸びていくだろう、という結論です。石油を使うといえば火力発電が思い浮かびます。火力発電では当然大量の二酸化炭素を排出します。結果として、世界全体でみれば二酸化炭素の排出量は減ることは無いでしょう。
しかしこの記事を読む限りでは、あくまでも新興国の問題となっていますし、確かにそういう面もあると思います。しかし実際にはもっと別の問題があるのでは無いでしょうか。現在先進諸国では太陽光発電や風力発電などの、再生可能エネルギーが普及しつつあります。そして何度となくお伝えしていますが、例えば太陽光発電では、夜間には発電することが出来ません。では夜間の電気はどうするかというと、昼間発電したものを蓄えておくか、さもなければ代替手段としての発電で補うしかありません。代替手段としての発電というと、そう原子力発電や火力発電などになってしまいます。再生可能エネルギーにしたからといって、すぐに火力発電などを止めることは、現実には難しいのです。
また太陽光発電に必要な太陽光発電パネルを製造するのに、大量の二酸化炭素が排出されている、という指摘もあります。
中国のソーラーパネル業界はここ何年か、安価な石炭火力発電のおかげで競争上の優位を確立し、世界市場を席巻してきた。
中国のメーカーは、大半のソーラーパネルに使われる多結晶シリコンの供給で世界の4分の3以上を占めると、業界アナリストのヨハネス・バーンロイター氏は話す。多結晶シリコンの工場は、精製過程で大量の電力を使うため、安価な電力を利用できることがコスト優位性をもたらす。中国当局は、新疆ウイグル自治区や内モンゴル自治区といった人口密度の低い地域に石炭火力発電所を相次ぎ建設し、多結晶シリコンメーカーなどのエネルギー消費量の多い産業を支援している。
中国でソーラーパネルを生産すると、欧州で生産する場合に比べてCO2排出量は約2倍だと、コーネル大学のフェンチー・ユー教授(エネルギーシステム工学)は指摘。ノルウェーやフランスのように、化石燃料に発電を依存していない国や地域の一部では、中国製の高炭素ソーラーパネルを設置した場合、CO2排出量が全く削減されない可能性もあるとユー氏は述べた。
この辺りは詳細なデータで検討しないといけない部分なのだと思いますが、いずれにせよ二酸化炭素の排出量を減らすという事は、実はどうしてなかなか多くの問題を抱えています。もちろんだからといってあきらめていい問題ではありません。少しずつでも解消していかないといけないでしょう。そしてその目標のために、私達の生活や仕事などが制限される事は、あってはならない事だと思います。脱炭素は大切ですが、それらを現実的にどう解決していくのか。現実的に解決するためには、時と場合によっては原子力発電所を再稼働しないといけないのでは、という事をしっかりと考えていく必要があるでしょう。