太陽光発電といえば、ある一時期には「環境汚染の心配が全く無い夢のエネルギー」のような扱いを受けていました。当時をご記憶の方も多いかと思います。しかしこの数年、特に一般的に太陽光発電が普及をはじめるに伴って、そこまで夢のエネルギーでは無かったのではないか?という現実が、段々と一般の方にも知れ渡るようになってきました。
読売新聞:【独自】川が汚れてから住民気づく…太陽光発電巡りトラブル続発、条例で規制も
岩手県遠野市の担当者は言う。同市は、既存の条例を改正し、昨年6月、全国的にも厳しい「1万平方メートル以上の太陽光発電事業は許可しない」という新ルールを設けた。背景には深刻な環境問題がある。
市内を流れる一級河川・猿ヶ石川で赤茶色の濁りが確認されたのは2019年4月。濁水は、山奥の小さな川から流れ込んでいた。その小川のそばでは18年4月、約90万平方メートルの広大な敷地で太陽光発電の建設工事が始まった。雑木林を伐採した造成地で土がむき出しになり、雨が降ると泥水が川に流れ込んでいた。
「太陽光計画は全く知らなかった。川が汚れてから住民が気づくなんて、こんなばかな話はない」。猿ヶ石川近くの柏木平地区自治会長・多田裕さん(69)は憤る。濁水は流域の水田に流入したほか、川の生態系にも影響を与えた。ヤマメの養殖が一時停止し、アユの養殖量は減ったという。
限定記事ですが、読める範囲だけでもかなり深刻な環境破壊が広がっている、というのが伝わってくるかと思います。そしてこの記事の中で特にポイントとなってくるのは以下のところでしょう。
雑木林を伐採した造成地で土がむき出しになり、雨が降ると泥水が川に流れ込んでいた。
あえて擁護するのであれば、太陽光発電それ自体は確かに環境に優しいのかもしれません。しかし太陽光発電で大量の電気を発電しようとすると、どうしても大量の太陽光発電パネルが必要となるため、広大な土地が必要となります。また太陽光発電用のパネルは、多くの太陽光を受ける必要があるために、日照時間を長くする必要があります。つまり障害物の少ないところに設置する必要があるわけです。ところが森や竹林などではそれらが障害物となってしまい、十分な発電量を得ることができません。そのために雑木林などを伐採して、空いたところに太陽光パネルを設置する必要が生じてしまいます。
しかし雑木林には実に多くの役目があります。木があることで赤土が流れないようにしていたり、場合によっては土砂崩れなどが起きないようになっていたり、などなどです。そうしたバランスを無視して雑木林を切り開いてしまっては、当然環境に対して大きな影響が出てしまうのは、至極当然といえるでしょう。
更に太陽光パネル自体にも有害物質が含まれてしまっているため、それらを処分するときにどうすればいいのか?という問題が発生してしまっています。また既に何度も書いてきていますが、太陽光発電では「大量」に「安定」して電気を発電することはできません。発電量はどうしても天気に左右されてしまいます。少なくとも現在の状況では、メインの発電方法にはなりえないでしょう。つまり太陽光発電そのものが、かつて考えられていたような「夢のエネルギー」では決して無い、という事が近年どんどんと明らかになってきています。
もちろんだからといって、太陽光発電自体をやめればいいという事にはなりません。「適材適所」という言葉があるように、太陽光発電にもその効果を十分と発揮できる使い方があります。また今後の研究次第では、より効率的に発電が出来る可能性もまだあります。大切なことは、発電の「メリット」と「デメリット」を総合的に判断して、バランスを見ながら考えていくということでしょう。「自然エネルギーだけ」というやり方では、いつか限界が見えてきてしまうことでしょう。