電気の需給バランスとは?

北海道胆振東部地震から、ずいぶんと時間が経ちました。災害の復旧などもかなり進んできたことと思います。災害の復旧に携わった方々には、本当に感謝の言葉しかありません。

ところで北海道胆振東部地震に伴って発生した、大規模停電ですが、その原因は北海道電力の苫東厚真火力発電所の設備が地震により損壊したため、北海道全体の電力の需給バランスが崩れたため発生した、とのことです。この「電力の需給バランス」とは、具体的にどういう事なのでしょうか?なぜ「需給バランス」が崩れると、大規模停電が発生するのでしょうか?今回は電力の需給バランスについて見ていきたいと思います。

電気の「品質」について

電力の需給バランスについて考えるには、まず「電気の品質」について考える必要があります。電気の品質については、この工場電気ドットコムのコラムでも何度か書いてきましたが、簡単に書いてしまうと「電気の質=周波数」という事になります。周波数は、新潟県の糸魚川と静岡県の富士川を結ぶ線より東の地域では50Hz、西の地域では60Hzになりますが、その周波数が常に一定であるという事がイコール「良い品質の電気」という事になります。もし電気の周波数が不安定であれば、利用している機械などが不安定な動作になってしまい、止まってしまったり動かなくなってしまうでしょう。この「安定した周波数」を実現するために重要なのが、「電気の需給バランス」なのです。

電気の需給バランス

電気の需給バランス

電気の需要と供給を、それぞれ「重さ」に例えて考えたものが上の図になります。左側が電気の需要量、右側が電気の供給量となります。普段の状態であれば、この需要と供給はほぼ同じなので、バランスが取れた状態になります。需要に対して供給が少なくなる、つまり電気が足りない状況では電気の周波数が下がってしまいます。逆に需要に対して供給が多い、つまり電気が余っている状態では、周波数は上昇してしまいます。そのため電気の需給バランスを保つことが、大事になってくるのです。

ちなみに電気の供給の中には、原子力発電、火力発電、水力発電、太陽光発電…などなど、多くの方法で発電された電気が含まれます。先日の北海道胆振東部地震の際にはその内の火力発電が供給不足に陥ってしまい、電気の需給バランスが大きく崩れてしまいました。そのためにあのような北海道全域に及ぶ、大停電が発生してしまったのです。

季節や時間で異なる電気の需給バランス

この電気の需給バランスは、季節ごとに大きく異なっていきます。すでにご存知のことと思いますが、夏や冬は冷房や暖房で、大量に電気が必要になります。また季節だけでは無く、一日の中でも、昼と夜で電気の需要量が大きく違ってきます。ですのでそうした電気の需要に合わせた、発電の計画・運用が必要になってくるところです。

ここで難しいのは、電気不足に備えるために単純に常に大量の電気を発電していればいい、という事ではありません。その時の「需要量」にあったバランスで、適切な量の発電をしないといけないという事です。そうしないと電気の周波数、つまり「電気の質」が悪くなってしまうのです。

大切なのは安定した発電

太陽光発電は夜間の発電できませんし、また曇りの時も発電量が落ちてしまいます。風力発電も風が吹くか吹かないかで発電量が全然違ってきてしまいますので、「安定した発電」には程遠い発電方法なのです。地方電力会社は太陽光発電の電気を買い取っているのですが(固定価格買取制度)、太陽光パネルが増えて買取しないといけない太陽光電力が増えてしまったため、このままでは電力の需給バランスが崩れてしまう事態が懸念されていました。九州が再生可能エネルギーの出力を制御するよう指示を出したのは、記憶に新しいかと思います。

まとめ

電力の需給バランスにとって一番大切なのは「安定した発電」です。しかし再生可能エネルギーの多くは、不安定な発電能力です。そのためいずれ電気の需給バランスが崩れてしまうのでは無いか、と懸念されていました。実際に電気の需給バランスが崩れるとどうなるか、という事は北海道の大停電を見れば分かるかと思います。

確かに再生可能エネルギーは、これからの電気事業にとって大切な分野です。しかしその前にまず、国内の電気の需給バランスをしっかりととって、安定した発電をしていくことが大事なのでは無いでしょうか。現代社会では電気は必須のものです。そうした観点から、今後の電気について、しっかりと考えていく必要があるでしょう。