10月26日、臨時国会が招集されました。そこで菅首相は、就任後初めてとなる、所信表明演説を行いました。その中で、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにして脱炭素社会を実現させる、という宣言をしました。
FNNプライムオンライン:菅首相、初の所信表明演説 「脱炭素社会」「デジタル化推進」
菅首相は26日午後2時ごろ、衆議院本会議で所信表明演説を行い、2050年までに国内の温室効果ガスの排出を実質ゼロにする方針を表明した。
菅首相「わが国は、2050年までに、温室効果ガス排出を全体としてゼロに。2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言する」
今や温室効果ガスは世界的な問題となっています。EUでも昨年12月にやはり同様の目標を打ち出しています。菅首相の発言もこれに追従する形になります。そして脱炭素社会の実現時期を明言したのは、これが初めてとなります。これは評価するべきことでしょう。
しかし単純に「温室効果ガスを削減する」と言っても、実現はなかなか困難です。特に現在日本の発電は、そのほとんどが火力発電によって賄われています。そして火力発電では、どうしても温室効果ガスを排出してしまう事になります。火力発電で発生する温室効果ガスを少なくする方法も研究・実現されていますが、もちろんゼロにすることは出来ません。
ところで発電する際に、全く温室効果ガス=二酸化炭素を排出しない発電方法には何があるか、みなさんご存知でしょうか?太陽光発電や風力発電はもちろん二酸化炭素を排出しません。しかし実は原子力発電も、二酸化炭素を排出しないのです。
火力発電は石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料を燃やし、その熱エネルギーを利用して発電を行っているため、発電の過程でCO2を排出します。
一方、原子力発電は、ウラン燃料が核分裂した時に発生する熱を利用して発電しているため、太陽光発電や風力発電と同じように発電時にCO2を排出しません。原子力発電は地球温暖化防止の観点で、優れた発電方法の一つです。
このように「脱炭素社会を目指す」という観点において、原子力発電は実はとても有効な手段なのです。もちろん太陽光発電や風力発電も温室効果ガスを排出しません。しかしそれらは天候に左右されてしまう、不安定な発電方法です。他の再生可能エネルギーも同様です。原子力発電は温室効果ガスを排出せずに、大量の電気を安定して発電することが出来る、数少ない発電方法なのです。この点は実は先の菅首相の所信表明演説でも、明言されています。
環境ビジネスオンライン:菅首相、「2050年までに温室効果ガス実質ゼロ」を宣言
また、「省エネルギーを徹底し、再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、安全最優先で原子力政策を進めることで、安定的なエネルギー供給を確立する」と述べるとともに、石炭火力発電に関する政策を抜本的に転換すると話した。
このように、再生可能エネルギーを導入しつつ更に原子力による発電も進めていく、と発言をしています。原子力発電は東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発事故の影響で、そのイメージは悪いものとなってしまいましたが、実際には私達の生活に必要な電気を安定的に大量に作り出してくれて、更に環境にも優しいという面も持っているのです。
現状まだ日本のほとんどの原子力発電所は、稼働を停止しています。しかしそれらはいずれ再稼働が進んでいくことでしょう。それは私達の電気代にとっても、良い影響を与えるに違いありません。