以前「ドイツでの再生可能エネルギー発電について」という内容にてコラムを書きました。今回はその続きというか補足となる話になります。このコラムの時にも書きましたが、ドイツでは再生可能エネルギーが盛んに行われており、高い普及率となっています。その中でも特に風力発電の割合が高く、いまやドイツでは至る所で風力発電の風車を見ることができるという話もあります。しかしその風力発電に対して、新規建設への反対運動が起きているのです。
国際環境経済研究所:「居住地から1キロ離せ」――風力発電への逆風
ドイツの風力発電の導入はこの10年余り、順調に伸び続けてきた。風車の数はドイツ全土で約3万機に達している。2018年、陸上風力発電は総発電量の14.3%を占め、洋上風力発電の3%、太陽光の7.1%よりはるかに多い。2019年の風力発電量(11月まで)は、風況に恵まれ、10万8000ギガワット時となった。すでに昨年1年間の水準に達し、これまでで最大である。総発電量の35%を占めるようになった再生可能エネルギーの中でも、中心的な位置を占めている。
その陸上風力発電に今逆風が吹いている。風車建設への反対運動がドイツ各地で起きているのである。
ドイツの報道では、住民運動の反対理由は、野鳥が羽根にぶつかって死ぬ、地下水が汚染されるなどだが、一番の理由は景観が破壊されることだろう。私はドイツ特派員時代の2011年に、ブドウ畑が広がるラインヘッセン地方の400年続くというワイン醸造所を訪ね、そこの当主に話を聞いたことがあるが、彼が「ブドウ畑の周辺に風車100基を立てられるより、原発1基で電気をまかなった方がいい」と言い切ったのが印象的だった。確かに醸造所の周辺を歩くと、低い丘にブドウ畑や森が連なり、この景観を破壊されたくないという彼の愛着には、十分に共感することが出来た。ドイツの公共放送ARDによると、風車の新規の設置数は2016年1624基、17年1792基と増えてきたが、18年は743基に急減し、19年も9月までに150基しか建設されていない。
このように、主に景観の問題などがあってドイツでの風力発電への反対論が起きてきているようです。確かに風力発電には巨大な風車が必要です。それもかなりの大きさなので、見慣れた風景に突然そのような巨大な風車ができるとなったら、拒否反応を示す人がいても仕方ないのかもしれません。
以前も書きましたが、ドイツでは「2050年に再生可能エネルギーの発電比率を80%に引き上げる」という目標を掲げています。しかしこの風力発電への反対運動により、この目標を達成するのは難しくなるでしょう。
繰り返しになってしまいますが、風力発電を始めとした再生可能エネルギーにはまだまだ多くの解決しないといけない課題があります。それをいかにして解決していくか、環境に対して優しいエネルギーにしていくか、問題は山積みだと言えるでしょう。だからといって再生可能エネルギーを全て停止してしまう、というのは逆に無責任だと言えるでしょう。ドイツの例を参考にして、日本でも再生可能エネルギーの研究と発展を進めていくことが、大切だと思われます。