先日のことですが、Twitter上で朝日新聞経済部の小森敦司記者が、以下のようなTweetをされました。
九州にはすでに太陽光発電設備が800万キロワット以上もある。のみならず、もっともっと入れられるのだ。もう、老朽原発を動かす余地はない。はっきりした。自然エネルギーが原発を凌駕していく。 https://t.co/dLDU8F2jsf
— 小森敦司 (@komoriku_n) February 14, 2019
九州にはすでに太陽光発電設備が800万キロワット以上もある。のみならず、もっともっと入れられるのだ。もう、老朽原発を動かす余地はない。はっきりした。自然エネルギーが原発を凌駕していく。
確かに九州では昨年10月に、発電量が余ってしまう恐れがあるために、太陽光発電の買い取りを一時停止した、という話がありました。ですので「電気が余っている」と言われれば、確かに余っているのかもしれません。
しかしその「電気が余っている」時に行われたのは、自然エネルギーである「太陽光発電の買い取り停止」です。自然エネルギーを増やそうという話にはなりません。一体どうしてでしょうか。
今までにも何度かコラムでも取り上げていますが、太陽光発電はご存知の通り天気がいい時には発電量が増えますが、逆に天気が悪い時などは、発電量が減ってしまいます。夜間などはほとんど発電が出来ません。また夜間に発電ができないという事はある程度予想がつきますが、昼間などは天気が変わりやすいので、どれくらいの発電量になるのか、予想がつきづらいのです。
最初に挙げた朝日新聞記者のTweetにある「太陽光発電設備が800万キロワット以上ある」の800万キロワットという数値ですが、これはあくまでも「最大発電可能量」です。その発電施設が発電できる、最大容量となります。また上にも書いたように、太陽光発電は「不安定な」発電方法です。実際には800万キロワットの発電量を出すことは、かなり難しいでしょう。
ちなみに発電所などでの電力容量が話題になったときに出る単位ですが、kW(キロワット)は設備容量を表します。これはその発電施設の最大発電可能値=瞬間の出力、となります。一方kWh (キロワット時)という値が出た時には「設備利用率」となります。これはその発電施設の稼働率、つまり継続した出力を表していると考えられます。そして発電施設にとって大事なのは、後者の設備利用率となります。
発電にとって大事なのは、コストももちろんですが、いかにして「安定した電力量」を供給できるか、という事になります。電気は需要と供給のバランスが崩れてしまうと、大停電が発生する可能性が出てきてしまいます。電気は足りなくても余りすぎていてもいけないのです。しかし太陽光発電は上にも書いたとおり、天気によって発電量が左右されます。例えば冬などは夕方に電力需要が最も多くなりますが、その時間帯に太陽光発電は発電量が減ってしまうのです。
確かに太陽光発電の理念自体は素晴らしいと思うのですが、しかし「安定した電力量」という意味では、実はなかなか実用には難しい発電方法です。そして低コストでかつ安定した発電、という事では、実は現状原子力発電以上の発電方法は存在しません。しかし発電方法を一つに限定してしまう、というのもそれはそれで、なにかあった場合の代替発電方法が無くなってしまう、という問題も含んでいます。結局のところ、太陽光発電はあくまでもサブ的に利用して、メインは原子力発電であったり火力発電などで行っていく、という方法が現状では一番現実的な発電方法だと言えるでしょう。
繰り返しになりますが、発電にとって一番大事なのは「安定した電力量」を発電できるかどうか、という事に尽きます。いかに「最大発電可能量」が大きくても、そのうちの1割も安定して常時発電できないようであれば、ほとんど意味はありません。直近では、北海道胆振東部地震の際に発生した大停電も、電力の需要と供給のバランスが崩れたことにより発生いたしました。これからは電気については「安定とバランス」という観点から、考えていかないといけないでしょう。