1995年の「電気事業法改正」に始まった電力自由化の流れも、1999年に特別高圧が、2003年に高圧が、そして2016年には低圧電力が自由化となり、日本の全ての電力の小売りと発電が全面的に自由化されました。新電力時代の幕開けです。
今ではすっかり軌道に乗り始め、いい事ばかりのように見える新電力ですが、果たして今後はどうなのでしょうか?今回は新電力が抱える、今後の課題について考えていきましょう。
収益性の確保
まずなんといっても最大の課題は、いかにして安い電気を確保していくか、という事でしょう。自前で発電施設を持っている会社はいいのですが、そうでない新電力会社は結局他所から電気を購入しないといけません。新電力の競争相手も多くなってきているので、なんとかして安く電気を集めないと、利益が確保できなくなってしまいます。いかにして他所よりも電気を安く集められるかが、新電力会社のカギとなりそうです。
安定した電力の確保
上の「収益性の確保」とも関係してきますが、電力をいかにして安定して集められるかが、新電力の最大の問題だといっても過言ではありません。
もちろん自分のところで発電施設を用意できるのであれば、こうした収益性や安定性の問題は解決します。解決しますが、そうなると発電施設の設備投資や保守管理にコストがかかってしまいます。そうなると消費者への安価での電気の提供が、難しくなってしまいます。地方電気会社よりも安価で電気を販売できるのが新電力会社の強みなので、そこは気をつけないと本末転倒になってしまうでしょう。
もちろん契約されている新電力会社が資金不足やその他の原因で電気を集められなくなったからといって、あなたの工場が停電になったりするわけではありません。そのような時には「常時バックアップ」といって、従来の地方電力会社から代わりに電気が送られてくるシステムがあります。その点はご安心ください。
制度の将来的な見通し
上にも書いたように、新電力はまだ出来てからそれほど経っていない、いわば新しい分野です。その中でこれから先、新電力に関連するような新しい制度などが、どんどんと出来てくることは考えられるでしょう。新電力にとっていい方向に働く制度が出来てくれば、それはそれでいいのですが、場合によっては悪い方向に働いてしまう制度が出来てしまう可能性だって十分考えられます。
具体的には「FIT買取制度の変更」が上げられるでしょう。
これは2015年、電力完全自由化の少し前ですね、に決定されたのですが、簡単に説明しますと新電力などが他から電力を買う際の価格が値上げされてしまった、という事です。電気の仕入れ値が値上げされたということは、いずれ新電力と契約している消費者の電気代も値上げせざるを得なくなる、という事になります。そして今後もこのように制度が変わることで、新電力にとって悪い方向に働く可能性は十分にあるのです。そういったリスクがある、という事だけは、しっかりと認識しておいた方がいいかもしれません。
従来の電力会社との競争
最後になりますが、やはりなんといっても、従来の地方電力会社との競争が新電力の課題になってくるでしょう。電力自由化で新電力の会社が多数参入してきたところで、やはり地方電力会社には従来の発電施設やノウハウなどがあります。こういった地方電力会社に対抗できるくらいに新電力会社が大きくなっていかないと、結局従来通りの地方電力会社だけでいいのでは無いか?という話にもなってしまいかねません。それでは結局今までに逆戻りになってしまいます。
まとめ
以上、新電力の課題をまとめていきました。少し専門的な話題になってしまいますが、新電力はまだまだ始まったばかりで、そこには課題がいくつかあるという事がお分かりいただけたでしょうか?もちろん課題があるからといって、今すぐに新電力各社がどうにかなってしまうわけではありません。むしろこれらの課題を着実にクリアしていけば、新電力には明るい未来が広がっているということです。
特に2018年から2020年にかけて、今度は「発送電分離」が行われます。これにより、また新しい課題が出てくるでしょう。
新電力への切り替えを考えておられる町工場・工場の方は、新電力への情報を更にたくさん集めて、比較検討していただきたく思います。工場電気ドットコムでは、もちろんそのお手伝いもさせていただきます。