いまや世界中の流れは「脱炭素」になりつつあります。しかし脱炭素は言うほど簡単では無く、実現するには様々な問題があります。最も大きいのが電気の問題で、発電方法の多くは二酸化炭素を排出することとなります。そんな中、フランスが大きな決断をしました。
日本経済新聞:フランス、原発建設再開へ マクロン氏「脱炭素へ必要」
【パリ=白石透冴】フランスのマクロン大統領は9日のテレビ演説で、国内での原子力発電所の建設を再開すると発表した。従来は原発への依存度を下げる立場を取ってきたが、2050年に温暖化ガス排出量の実質ゼロを達成するために必要だと説明した。
ロイター通信によると、建設するのは小型原発ではなく通常の原発。加圧水型原子炉を最大6基、建設する計画を数週間以内に発表するという。
マクロン氏は10月には10億ユーロ(約1300億円)を投じ、発電規模の小さい原子炉「小型モジュール炉」を2030年までに国内で複数導入すると明らかにしていた。今回の発表で、原子力の活用にカジを切る姿勢をさらに鮮明にした。
フランスが原子力発電所建設再開へ舵を切ったのは、かなり大きな出来事なのでは無いでしょうか。すでにこの工場電気ドットコムのコラムでは何度も書いてきましたが、「脱炭素」を実現するのは、実は原子力発電は必要不可欠です。安定して大量の電気を発電し、かつ二酸化炭素を排出しない方法は、実は原子力発電ほぼ一択になります。もちろん再生可能エネルギー発電も二酸化炭素は排出しませんが、これらは安定して大量の電気を発電することに向いていません。火力発電の中でもLNGなど効率の良い発電もありますが、やはり原子力発電にはかないません。またLNGはここで燃料となるガス価格が高騰しているのも、問題となっています。
「脱炭素」は理念としては素晴らしい物だと思います。しかしそれを実現するためには「現実」を見据えていく覚悟が必要です。二酸化炭素を出さずに大量かつ安定した電気を発電する方法は原子力発電所しか無い、というのが「現実」です。今回のフランスの決定は、他の先進諸国にも少なからず影響を与えていくことでしょう。