皆さんも小学校や中学校などの時、社会科見学として「工場見学」をされた事があるかもしれません。実はこの「工場見学」が今密かなブームになっているのです。例えばGoogleで「工場見学」という単語で検索をかけると、全国で工場見学が可能な工場のリスト、地域別の工場見学のオススメリストなどが検索結果に出てきます。特に工場の業種によっては、試食や試飲なども出来ますし、場合によってはお土産をもらえることもあって、そういった面からも高い人気があるということがわかります。中にはテーマパークのように設備が揃えられている、工場見学などもあるというから驚きですね。
ところでこうした工場の見学は企業側、製造業側にはどれくらいのメリットがあるのでしょうか。
まず考えられることは、との地域との交流を盛んにするということでしょうか。大きな工場に対しては、やはり地域の住民方もそれなりの不安を感じてしまうことがあるでしょう。しかしそこで何を製造しているのか、どういった人たちが働いているのか、ということを工場見学を通じて公開することで、地域からの信頼も得られますし、交流も盛んになります。地域住民との交流が得られれば、例えば何か起きた時に理解を得やすくなるということは言えるでしょう。
そうして地域からの信頼が得られれば、新しい人材採用に繋がることも考えられます。アルバイトやパートなどに、地域住民の応募が増えることも考えられますし、その中から優秀な人材が社員として入社するだろうことも、想像に難くありません。地域にそうした製造業の工場がある、ということが分かれば地域の子供達もそれを目指して勉強などをしてくれるかもしれません。
雇用面だけではありません。新しい顧客や需要なども生み出す可能性があります。多くの人たちに業務内容を知ってもらうことで、見学に来ていただいた方の中から新しい繋がりが生まれる可能性は十分あります。また新製品の共同開発の話なども、持ち込まれるかもしれません。そうした様々なアイデアや人材などが入ってくるためには、工場見学などのようにある程度開かれた環境が必要となってきます。
しかし当然のことながら、メリットがあれば逆にデメリットもあります。工場見学のデメリットとは、一体なんでしょうか?
まずはなんといっても工場見学のために必要となる、人材を確保しないといけないということでしょう。普段製造に携わる方たちに直接見学の案内をさせるとなると、専門分野では無いので当然難しいでしょう。通常業務の合間をぬう形になりますので、どうしても労働時間が増えてしまいます。そうなると今度は専門スタッフを雇おう、という事になりますが、工場見学が果たしてどれだけ需要があるのかどうか分からない段階で新規スタッフを雇うという事は、コスト的にかなり難しいと言えるでしょう。
また特に製造業などの場合、工場には様々な危険要因があります。製造過程などを間近に見てもらおうとすればするほど、それは同時に来場者を多くの危険に晒すことになってしまうのです。たとえば周囲をガラス張りにしてそこで見学してもらえば一番いいのでしょうが、そうした設備を確保するのにも、時間と費用がかかってしまいます。
また特に一般向けに工場見学を行う場合、様々な情報流出が懸念されてしまいます。ライバル企業の社員などが見学に紛れ込んでいた場合、機械や設備を見ただけで重要な秘密が流出する可能性だって十分に考えられます。どこからどこまでを公開して、どこを秘密にしておくか、というのは実はかなり難しい問題だと言えるでしょう。
実際にこれから工場見学を開始しよう、と考えていらっしゃる製造業の皆様は、ここに書いたような様々なメリットとデメリットを比較して、対策をしていかないとならないでしょう。しかし例えば、近隣住民との交流だけであれば地域の展示会やイベントなどに参加する、という手段もあります。目的に応じて、様々な手段を考慮していくことが大切だと言えるでしょう。