「ダム」と言えば、水力発電のために作られる施設です。大量に水を貯め、その放水のエネルギーを利用して大量の発電を行います。そしてダムには発電だけでは無く、「災害防止」という役割もあります。大量に水を貯めることが出来るので、水の流れをコントロールする事が出来るのです。台風や豪雨などの時に河川を流れる水量を制限して、下流に水害が発生するのを防ぐのです。ダムがあっても耐えきれないほどの大量の雨が降った場合など、一時的に下流へ大量の水を放流することがありますが、その場合はあらかじめ避難勧告などを行うので、住民の避難は出来ており被害を少なくする事が出来ます。
そんなダムですが、ここしばらくインターネット上で話題になっているダムがあります。それが中国にある「三峡ダム」です。
三峡ダム(さんきょうダム)は、中国・長江中流域の湖北省宜昌市三斗坪にある大型重力式コンクリートダムである。
1993年に着工、2009年に完成した。洪水抑制・電力供給・水運改善を主目的としている。三峡ダム水力発電所は、2,250万kWの発電が可能な世界最大の水力発電ダムである。
ダムは長江三峡のうち最も下流にある西陵峡の半ば(湖北省宜昌市夷陵区三斗坪鎮)に建設された。貯水池は宜昌市街の上流の三斗坪鎮に始まり、重慶市街の下流にいたる約660 kmに渡り、下流域の洪水を抑制するとともに、長江の水運に大きな利便性をもたらす。このダムの建設によって、それまで重慶市中心部には排水量3,000 t級の船しか遡上できなかったのが、10,000 t級の大型船舶まで航行できるようになった。加えて、水力発電所は中国の年間消費エネルギーの1割弱の発電能力を有し、電力不足の中国において重要な電力供給源となる。
書かれている通りこの三峡ダムは、世界最大のダムだと言っていいでしょう。まさに現在の発展し続ける中国を象徴するようなダムだとも考えられます。しかしこの三峡ダムの上流で今年6月半ばから大雨と豪雨が続き、記録的な雨量が観測されました。結果インターネット上では、「三峡ダムが決壊するのでは無いか?」という噂が囁かれていました。
産経新聞:【花田紀凱の週刊誌ウオッチング】〈792〉世界最大の中国・三峡ダムは決壊するのか
月刊『Hanada』9月号でも取り上げたが、中国では6月半ばから62日間にわたった大雨と集中豪雨により各地で大洪水が発生。三峡ダムも、水位167メートルを記録し、制限水位を超えた。
〈YouTubeには(中略)もし決壊すれば、約30億立方メートルの濁流が下流を襲い、武漢、南京が水没し、上海付近の原子力発電所や軍事基地まで甚大な被害を受けるだろうと危機感をあおった。4億人が被災するとの試算もあった〉
もしかしたらニュースなどで、ダムのギリギリまで水がたまった三峡ダムの姿を見た方もいらっしゃるかもしれません。今にも水が溢れ出してしまいそうです。「三峡ダムが決壊する?」という噂を信じたくなってしまいます。
しかし三峡ダムは「重力式」という方式で建設されているダムです。これはダムの重さ自体で、水の力を支えるという構造です。そのためダムとしては、最も頑丈な形式として知られています。地震や洪水などの災害には、特に強い方式です。そのために日本のダムの多くは、この「重力式」という方式で作られています。とにかく三峡ダムがこの「重力式」で作られている以上、ダム自体が壊れるという事はまず無いだろう、というのが多くの専門家の見方です。
しかし三峡ダムの破壊自体が無くとも、水位が地表面までに上がってしまえば、そこから大量の水が溢れだしてきてしまうでしょう。また三峡ダムにそこまで水が溜まってしまうほどの豪雨であれば、すでにそれ以外のところで多くの水害が発生してしまっていると見るべきです。いずれにせよ、まだまだ油断は出来ない状況だと言えます。
今回の三峡ダムのように、豪雨によってダムに大量に水が溜まってしまうという状況は、日本でも起きないとも限りません。三峡ダムが決壊するかどうか心配するのは構わないのですが、そうした状況が日本のダムでも起きないようにする、という事こそが大事なのだと思います。