この工場電気ドットコムのコラムでは、度々発電方法について書いてまいりました。今回は「海洋温度差発電」について書いていきたいと思います。しかし「海洋温度差発電」とは、あまり耳慣れない発電方法だと思います。一体どのような方法で発電をするのでしょうか?
海洋温度差発電とは?
海洋温度差発電とはその字のとおり、海の温度差を利用した発電方法です。海の表面に近い水は太陽光が届くので温められていますが、深海では太陽光が届かないため、温度はそれほど上がりません。その温度差を利用する方法です。
上の図が海洋温度差発電の仕組みです。沸点の低いアンモニアや代替フロンなどを作動流体として利用することで、温かい表面の海水と冷たい深層海水の間を循環させ、タービンを回すことで発電を行います。
まず表層海水の熱を利用して、作動流体を加熱し蒸発させます。気化した作動流体の勢いでタービンを回転させ発電、気化した作動流体は深層海水の冷たさで、再び液化されます。液体となった作動流体は、再び表面海水にある蒸発器に送られ、蒸発させられます。
海洋温度差発電は、1881年にフランス人の物理学者ジャック・アルセーヌ・ダルソンバールが提唱しました。そして1926年にフランス人の科学者、ジョルジュ・クロードが実験に成功したことで、実用化が進められるようになりました。意外と古くから提唱されていたのですね。
海洋温度差発電のメリット
海洋温度差発電に使う表層海水や深層海水は天然自然ものですので、基本的に温度が安定しており、急激に変わることはありません。真夏の暑い日や真冬の寒い日などには多少出力が変わることがありますが、基本的には発電出力は安定しています。そのため発電量の予測も比較的容易に行うことが出来ます。
また発電のために汲み上げた深層海水は、発電に使った後も水質は変わりませんし、水温も比較的低いまま保たれていますので、再利用が可能です。
海洋温度差発電のデメリット
では海洋温度差発電のデメリットはなんでしょうか?それはまず、海がある所でしか発電が出来ないということ。そして発電には、海面と深海の温度差が15度以上あるということが絶対条件になってきます。つまり利用できる地域が、かなり限定されてきてしまうというわけです。そのため海面と深海の温度差があまり無いような、遠浅の海では海洋温度差発電は設置することが出来ません。
では日本では海洋温度差発電が設置できるのは、どのあたりなのでしょうか?様々な条件があるとは思いますが、実際のところ九州の南や沖縄などに限定されてしまいます。世界規模で見ても、比較的赤道に近い暖かい地方でしか発電することは出来ません。
まとめ
海洋温度差発電が考案されてから100年以上経つほど古いのですが、その実現と普及には現在まだまだ多くの課題があるというのが実情です。特に設置できる場所がかなり限られてしまうため、実験などもなかなか大変なようです。日本では沖縄などで研究開発が進められていますが、発電にかかるコストはかなり低く効率的であるという結果が出ています。特に沖縄近海では、沖縄全域をカバーするほどの電力を発電可能であるという試算も出てきています。
いずれにせよ海洋温度差発電は、まだまだこれからの研究が必要な発電だと言って差し支えないでしょう。今後の研究と発展に期待ですね。