先日「電力容量市場、国民負担1.6兆円」の記事について」というコラムを書きました。
ところでその記事内に出てきた「電力容量市場」とは、一体どういう意味なのでしょうか?今回は電力容量市場について書いていきます。
容量市場とは、従来の卸電力市場で取引されている「電力量(kWh)」ではなく、「将来の供給力(kW)」を取引する市場です。
将来にわたる供給力(電源)を効率的に確保するために、諸外国で広く導入されている容量市場が2020年度に創設されることになりました。
具体的には発電所等の供給力に対し、長期的な投資回収の予見性を持たせることで、市場原理により適切な電源構築を行い、中長期的に必要な供給力等を確保するための仕組みです。
こちらの記事にも書かれていますが、つまり「現在の電気」についてでは無く、「未来の電気」についての取引をする市場ということになります。「未来の電気」というとなんだか分かったような、分からないようなイメージですが、つまりは将来において電気を効率よく確保するためにあらかじめ投資しておくこと、備えておくこと、とでも言うことが出来るでしょう。
容量市場を一言でいうと
将来にわたる日本全体の供給力(kW)を効率的に確保する市場です。供給力は、「発電することができる能力」と言い換えることができます。容量市場によって以下を目指しています。
・発電所の建設が適切なタイミングでおこなわれることで、日本における将来の供給力(kW)をあらかじめ確実に確保すること
・供給力(kW)の確保によって電力(kWh)取引価格の安定化を実現し、電気事業者の安定した事業運営や電気料金の安定化などの消費者メリットをもたらすこと
つまりは将来的に私達が使っていく電気がどれくらいの量となるのか、それら電気の安定した供給を、計画的に行っていくにはどうすればいいのか、という考えになります。それを踏まえて、将来的に必要となるであろう発電所、いずれ老朽化する発電所に代わって建つ新しい発電所、などを計画的に建設していくためにはどうしたらいいか、という事が大切になるわけです。そういった意味では「再生可能エネルギー発電促進賦課金」と同様に、今後に投資するための費用だと言えるでしょう。こうした取り組みは日本では、今年2020年から一部がスタートしています。
ところでこの「容量市場」という取り組みにおいて、果たして電気代は値上がりするのでしょうか?それとも値下がりするのでしょうか?この容量市場という考え方は上にも書いたように「電気の安定供給」を目指すためのものです。電気が安定して供給されれば、基本的には電気が大幅に値上がりするというような事は、「理屈としては」無くなるはずです。
では値下がりするのかというと、それも正直良く分からないところです。むしろこの「容量市場」の導入により、電気代が大幅に上がったり下がったりするような事は、特に無いのではないか?大きく電気代に影響を与えることは無いのでは?という気がします。もちろん実際にどうなるかは、しばらく様子を見ていく必要があると言えるでしょう。