ホルムズ海峡でのタンカー攻撃事件が電気代に与える影響とは

2019年6月13日、日本の安倍首相がイランを訪問し、最高指導者のハメネイ師と会談を行ったまさにその日、中東のホルムズ海峡において日本のタンカーとノルウェーのタンカーが、それぞれ何者かに襲撃を受けるという事件が発生いたしました。

テロリストがやったのでは無いか?」など、ネット上では犯人について様々な憶測が出ておりますが、現段階ではまだ犯人などは判明していません。しかし「犯人は誰なのか?」という事は、このコラムでは特に言及いたしません。当サイトは「工場電気ドットコム」ですので、特に電気代に関係あることについて書いてまいります。

さてこのコラムでは事あるごとに「燃料調整費」について書いてまいりました。簡単におさらいいたしますが、「燃料調整費」とは火力発電を行うための費用、原油やガスの購入費用やそれらを輸送するための費用、です。そしてこの「燃料調整費」は私達の電気代に上乗せされており、これが現在まで続く電気代高騰の原因の一つとなっているのは、疑いようが無いところであります。

その「燃料調整費」がまた値上がりするかもしれない、いやほぼ確実に値上がりするだろう原因が、この今回のホルムズ海峡での事件となります。タンカーには当然のことですが、火力発電の燃料となる「原油」が積まれています。実際にタンカーが攻撃された直後には、原油価格が急騰した、という報道も出ました。

日本経済新聞:ホルムズ海峡でタンカー2隻攻撃、原油価格急騰

今回の船舶攻撃は世界中のメディアが一斉に報じ、原油価格が上昇した。国際指標となるニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物は日本時間13日夜時点で1バレル53ドル前後で推移する。12日終値に比べ約4%高い。

原油は米中貿易戦争の激化を背景に世界経済が減速し、需要が落ち込むとの見方が台頭。供給がだぶつくとの観測から4月下旬以降、値下がり傾向が続いていたが、相場は急速に切り返した。

原油価格が値上がりすれば、上にも書いたように私達の電気代に上乗せされている、燃料調整費もあわせて値上がりするでしょう。原油価格の問題だけではありません。タンカーが「安全に」航海するための費用も、当然ですが必要になってきます。それらもすべて燃料調整費に上乗せされると言っていいでしょう。

アメリカとイランの関係も、より悪化の一途をたどる恐れがあります。あくまでも最悪の場合ですが、ホルムズ海峡が封鎖などされてしまった場合、原油の約7割、ガスの約6割が止まってしまう、というデータもあります。そうなると日本の安定的なエネルギー供給は大打撃を受けてしまうでしょう。原油が輸入できなくなると、火力発電がほぼ利用不可能になってしまうのです。現在ほとんどの原子力発電所が稼働停止しているこの状況で、火力発電まで停止してしまったどうなるか。おそらく日本の経済は停止してしまうでしょう。

この記事が書かれたのが、2012年2月となります。この時からすでに、ホルムズ海峡で事件が起きた場合の危険性は指摘されていました。つまり今回のような事件は、実はある程度予測可能な事態だったと言えるでしょう。

しかし原子力規制委員会などが、なかなか原子力発電所の再稼働を認めてこなかった、という流れがあります。現在の日本の電気状況は、とても綱渡り的な状況にあるといっても過言ではありません。一度バランスが崩れてしまうと、昨年9月の北海道胆振東部地震の時に発生した、北海道大停電のような事が、日本全国で起きてしまうでしょう。また東日本大震災直後の、計画停電のような事をまたやらざるを得なくなるかもしれません。そうなると節電だの、電気代だのと言っている場合ではなくなります。

東洋経済オンライン:ホルムズ海峡「タンカー攻撃」で日本への影響は

電力業界はホルムズ海峡経由での液化天然ガス(LNG)調達が比較的多い。電気事業連合会の勝野哲会長(中部電力社長、6月14日付けで退任)は「電力各社においてただちに電力供給で支障が生じることはない」としたうえで、「(ホルムズ海峡封鎖など)最悪のケースなども描きながら、危機感を持って対応していきたい」と話す。

この記事では「ただちに影響が出ることは無い」となっていますが、事件の今後の展開次第では、最悪の展開となってしまう事も十分考えておく必要があるでしょう。

電気は私達にとって、まさに命です。「ライフライン」という言葉が、まさにすべてを表していると言っていいでしょう。その電気が自由に使えない、使えるけれども料金が高すぎる、というのは本来であればあってはいけない事なのでは無いでしょうか?

今回のホルムズ海峡の事件の影響が、いつ頃どうやって出てくるかはハッキリとは分かりませんが、私達の生活の中の電気について考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか?