「脱炭素」ということで様々な再生可能エネルギーの研究・発展が求められています。しかし例えば風力発電であれば、24時間365日常に風が吹いている場所というのはあり得ませんし、太陽光発電であれば当然夜間は発電できませんし、また雨天時にも発電はできません。そうした再生可能エネルギーのデメリットが広く知れ渡るようになってきましたが、ここに来て東京都が新築住宅に対して太陽光パネルの設置を義務付ける?という話が出てきました。ニュースなどで知った方もいらっしゃるのでは無いでしょうか。
時事ドットコム:新築住宅に太陽光パネル メーカー義務化、条例改正へ―東京都
東京都は、住宅メーカーなどを対象に、新築物件の屋根に太陽光パネルの設置を義務付ける新制度を創設する。全ての住宅への一律設置を課すのではなく、事業者単位で目標を設定して達成を求める方針。住宅分野の脱炭素化が目的で、都の検討会で制度の導入時期など詳細を詰め、今秋以降に関係条例の改正を目指す。
設置を想定しているのは、延べ床面積が2000平方メートル未満の中小規模の住宅やビル。これまでは主に大規模建築物を対象に環境配慮を求めてきたが、着工棟数の大半を占める中小物件の対策を後押しする。総延べ床面積で年間2万平方メートル以上を供給するメーカーや不動産デベロッパーなどを義務付けの対象にする。
まずこの条例については、現在まだ検討段階であり、決定はしていないということです。早くても今年の秋頃に改正になるかもしれない、という話です。そしてもうひとつポイントとなるのは、対象となるのが「総延べ床面積で年間2万平方メートル以上を供給するメーカーや不動産デベロッパーなど」であり、そして「延べ床面積が2000平方メートル未満の中小規模の住宅やビル」だという事です。対象となる住宅メーカーの数でいうとおよそ50社程度になり、決して全ての新築住宅に適用される、という事ではありません。その上でこの条例改正には、少し疑問を覚えます。
確かに脱炭素は重要な目標ですが、上にも書いた通り太陽光発電は決して万能では無い、ということが特に近年分かってきています。その中でも特に今後大きな問題となってくるだろうというポイントとして、使わなくなった太陽光パネルの処分が挙げられます。今までにも何度か書いていますが、太陽光パネルの処分は、実はかなり費用がかかるのです。
太陽光パネルは、現代の技術では処分できません。太陽光パネルには、カドミウム、鉛、ヒ素、ポリシリコンといった⁰様々な猛毒性の物質が使われています。また、製造段階においても有害物質がでるらしく、⁰最終処分が困難であり、再利用することもできないため、⁰産業廃棄物となります。 pic.twitter.com/6bK6NdVBqB
— 松村尚和(Hisakazu Matsumura) (@matsuhis1) May 6, 2022
もちろん太陽光発電が全く役に立たない、という事は決してありません。例えば駐車場の屋上などのスペースを利用すれば、十分有効な発電量を賄うことが出来るでしょう。また夜間や雨天時には、通常の電気を利用するなどして、併用していけばいいだけの話です。台風などでパネルが飛散する危険性もありますが、それも対策をした上でしっかりと設置すればいいだけの話です。
太陽光発電の問題は結局のところ「どのようにして使うか」という所が見落とされてしまって、なんでもかんでも「太陽光発電を使えば大丈夫」となってしまっている所にあります。それでは結局「原子力発電があれば絶対大丈夫」と言っていた時となんら変わりありません。それぞれのメリットとデメリットを見極めて、適材適所で使い分けていくのが一番いい方法です。そうした議論抜きにして、とにかく新築住宅に太陽光パネルを設置するだけでは、逆に大きなリスクをもたらす結果になるかもしれません。
いずれにしても条例が改正されるのは、早くても今年秋なので、今後どうなるか推移を見守っていきたいと思います。