皆様は「地産地消」という言葉をご存知でしょうか?
「地産地消」とは、「地元で生産されたものを地元で消費する」という意味で言われています。
近年、消費者の農産物に対する安全・安心志向の高まりや生産者の販売の多様化の取組が進む中で、消費者と生産者を結び付ける「地産地消」への期待が高まってきています。
「地産地消」とは、上のページにも書かれている通り、その地域で生産されたものをその地域の中で消費する、という意味合いになります。地産地消のメリットは、まず地元地域の生産物を消費するため、その地域の経済が活性化するということ。そしてもう一つは地元で生産されたものなので、流通のための費用を節約することが出来て、全体的なコスト削減につなげることが出来る、ということです。
実は最近ですが「電気の地産地消」とい事が、話題になっております。「電気の地産地消」とはつまり、その地域で発電した電気を、その地域で消費するという事に他なりません。しかし「その地域で発電した電気を、その地域で消費する」ということを、電気でも出来るのでしょうか?この「電気の地産地消」に重要になってくるのは、太陽光発電や風力発電などの「再生可能エネルギー」です。
電気の発電方法についてはすでに何度か書いています。各発電所で発電をした電気は、まずは大型変電所に送られそこから各地域、家庭、オフィス、工場などへと送電されていきます。しかし実際には電気は送電線を通っている間に、多少のロスが生じてしまいます。この送電ロスは、送電線が長ければ長いほどに、高くなるのです。例えば北海道で発電した電気を沖縄まで送電しようと思ったら、かなりの送電ロスが生じてしまうでしょう。送電線の距離は、短ければ短いほどいいという事になります。
だからといって、火力発電所や原子力発電所をいくつも建設するというのは、資金的な問題もありますし、また火力発電所などは温暖化ガスの問題などもあるため、いまひとつ現実的ではありません。そこで目をつけられたのが、再生可能エネルギーによる太陽光発電や風力発電などです。個人の家庭に太陽光パネルを設置して、その電気で生活をするというのは、狭い意味での「電気の地産地消」といえるでしょう。
2016年に電力の小売の全面自由化が始まりました。いわゆる「新電力」の会社も、多く電気業界に参入してきました。そうした新電力会社の中には、独自の発電施設を持っているところもあります。そうした所はこの「電力の地産地消」に目をつけ、地域の活性化を図っているところも少なからず存在しています。
たとえば東北のある地域では、ある新電力業者が調整池と住宅などの屋根に1600枚近い太陽光パネルを設置することで、近隣の住宅や公共施設などの電気を賄っています。その地域が落雷で停電を起こした時にも、その一帯では電気を普通に利用することが出来たそうです。
もちろん太陽光パネルでの発電は、日照時間や季節によっては安定した発電が期待できなくなる時があります。そのような時は、他の電気事業者から余剰電力を買い付けてくる、という事で電気を確保しています。こうした仕組みをうまく使うことで、電気料金は地域電力会社と同等、あるいは安くすることに成功している所もあります。
また別の新電力事業者は一般家庭への電力小売を行うと同時に、地元品を扱う通販や電気の使われ方を見守るサービスを行っているところもあります。電気料金のうち一定の割合の金額を、環境保全活動や地場産業の活性化のために利用している所もあります。
以前から何度か書いていますが、再生可能エネルギーによる発電方法には地域差が多くあります。日照時間の長いところでは、太陽光発電が有利ですし、広い敷地があり一年通して風が吹いているような所では、風力発電が有利でしょう。また海のそばであれば、海洋温度差発電や潮流発電が有効です。それらをその地域で活用することが出来れば、送電ロスも少ないので、大変有効な手段となりえるでしょう。
ただしこちらも以前から書いていますが、再生可能エネルギーによる発電のほとんどは、発電量が自然に左右されるため不安定です。どうしても原子力発電や火力発電などをベースとしつつ、それをサポートする形で導入せざるを得ないでしょう。それでも「電気の地産地消」の考え方自体が、全く無駄なわけではありません。またこうした「電気の地産地消」には、地方自治体の協力が必要不可欠となっています。
「電気の地産地消」という考え方は、近年になって生まれた考え方です。ですのでまだまだ発展の余地もありますし、もちろん改善していかないといけない点も、多々あるかと思います。電気を通じて、地方経済が活性化するのであれば、これほど喜ばしい事はありません。これからの発展を見守っていきたいですね。