製造業で総務・会計・経理を担当されている皆様は、日々自社のコスト削減について頭を悩ませていらっしゃる事かと思います。企業にとってコストの削減は、今の時代無くてはならない命題だと言っていいでしょう。利益を上げることと同じくらい、いやそれ以上に重要視されているかもしれません。
しかし社長命令で「コスト削減」をする事となっても、そう簡単にコスト削減は実現できないことも事実です。なによりコスト削減にこだわるあまり、自社の生産活動に支障が出るようでは、それこそ本末転倒だと言っていいでしょう。一体どんな方法で会社のコストを削減していくか?確実な方法は無いか?簡単にできないだろうか?皆様、そこに悩まれていることと思います。
この工場電気ドットコムでは「簡単かつ確実に出来るコスト削減の方法」を、製造業の総務・会計・経理の担当者の皆様に、ご提案さしあげたいと思います。その方法とは…「新電力を利用した電気代値下げ」です。電気代は当然のことながら必要経費ですので、それを値下げすることで、コスト削減をしていくという方法です。
…と言っても「本当に電気代が安くなるの?」「そんなに簡単に出来るの?」「そもそも新電力って何?」と思われる方もいらっしゃるかと思います。そこで今回は、電気料金を値下げするための基礎知識を、製造業の総務・会計・経理担当者に向けて、ご説明していきたいと思います。
基礎知識その1:電気料金の内訳
電気料金の値下げについて説明する前に、まずは電気料金の内訳から説明していきたいと思います。そうすることで、電気代値下げの仕組の理解の助けになるかと思います。まずはこの画像をご覧ください。
単純に電気料金といいますが、実は電気料金は上の図のように、「基本料金」「電力量料金」「再生可能エネルギー発電促進賦課金」にそれぞれ分けることが可能です。それを更に式で表すと……
電気料金=基本料金 + 電力量料金 + 再生可能エネルギー発電促進賦課金
……となります。これが電気料金の基本的な内訳となりますので、覚えておいてください。ではそれぞれをもう少し詳しく見ていきましょう。
基本料金
まずは電気の基本料金となります。これは文字通り、電気代全ての「基本」となる料金です。この基本料金の金額は「従量電灯」「契約アンペア数」「電気使用量」という要素によって変わってきますが、今はそこまで詳しい事は分からなくても大丈夫です。
この電気代基本料金は、実は電気代値下げにとって、とても大事な基本の部分となってくるのですが、その説明は一旦後回しにさせていただきます。
電力量料金
次に注目したいのが電力量料金です。電力量料金は、更に以下のような式で表すことが可能です。
電力量料金=電力料金単価 × 使用量 + 燃料費調整額(燃料費調整単価 × 使用量)
「電力料金単価 × 使用量」というのは、つまり電気を使用した量に応じて料金が増える、という事になります。例えば電力料金単価が10円/kWhの時、100kWhの電気を利用すれば、10×100で、1000円になるという事です。つまり電気の使用量が少なければ安くなりますし、電気の使用量が多ければそれに比例して高くなってしまいます。
その次の燃料費調整額については、少し説明が必要かもしれません。燃料費調整額(燃料調整費)とは、発電所が火力発電などを行うときに必要な燃料(原油やガス)などを、外国などから購入するための費用となります。現在日本ではほとんどの原子力発電所が稼働を停止しているため、多くの発電を火力発電に頼らざるを得ません。しかし火力発電を行うためには、燃料となる原油を海外から購入しないとなりません。その原油などの購入費用が、私達の電気料金に上乗せされており、それを「燃料調整費」と呼んでいるのです。
この燃料費調整額は、「燃料費調整単価 × 使用量」で決まります。つまりこちらも先程同様に電気の使用量が多ければ多いほど、それに比例して額が上がってしまうのです。しかしここで問題となってくるのは電気使用量だけでは無く、「燃料費調整単価」の部分も実は価格の変動があるということです。
先程「燃料調整費は原油を海外から購入するための費用」だと説明いたしました。この費用にはもちろん原油自体の価格も含まれていますが、それ以外に実は原油などの「輸送費」も含まれているのです。そして皆さんご存知のように原油はそのほとんどが中東で産出されていますが、中東は政治的に不安定な地域となります。例えば原油を運ぶタンカーを狙ってなんらかのテロ行為が行われれば、それだけで輸送費は値上がりをしてしまいます。テロ行為が行われなくとも、「テロリストなどに狙われている」などの情報があれば、安全を確保するためにそれなりの費用をかけないといけません。そうした費用は全て「燃料調整費」に含まれてしまうのです。
またもちろん原油価格自体の変動もあります。40年以上前に「オイルショック」がありました。あの時は原油価格が高騰し、それに伴い日本経済は大打撃を受けてしまったのです。さすがにオイルショックほどではありませんが、原油価格は日々変動を続けています。
つまり「燃料調整費」は一定では無い、常に変動している価格だという事になります。この燃料調整費が安い時はいいのですが、2018年夏頃からじわりじわりと値上がりを続けている、というのが現状です。その結果として、前月と電気の使用量が全く変わらなくとも、燃料費調整単価自体が値上げすることで、燃料調整費が値上がりしてしまう、という事も起きてしまいます。2019年上半期の段階では燃料費調整単価の値上げは一旦落ち着いているように見えますが、今後どうなるかは分かりません。現在多くの方が「電気代が上がった」と思われているかと思いますが、その原因の多くはこの「燃料調整費」にある、と言っていいでしょう。
再生可能エネルギー発電促進賦課金
次に再生可能エネルギー発電促進賦課金についてです。再生可能エネルギー発電促進賦課金というのは、いわゆる「再生可能エネルギー」、つまり太陽光発電、風力発電、波力発電などを研究・発展させるための費用です。それが私達の電気料金に上乗せされています。これも仕組は燃料調整費などと同様です。
再生可能エネルギー発電促進賦課金単価 × 使用量
という式で表すことができて、やはり電気の使用量に応じて、その額が上がっていくようになっています。そしてこの「再生可能エネルギー発電促進賦課金単価」も、現在燃料費調整単価同様に値上げを続けています。やはり燃料調整費同様に電気の使用量が前月と全く同じであっても、電気料金が値上がりしてしまうという現象が起きてしまっているのです。
このように現在の電気代の値上がりの原因は、そのほとんどが燃料調整費と再生可能エネルギー発電促進賦課金の値上げによるものだと言えるでしょう。両者の厄介なところは、その単価自体が値上がりしてしまっているために、電気の使用量が前月と全く同じであったとしても電気代全体が値上がりしてしまう、という所にあります。一般的に「節電」というと、「電気を使わないようにすれば電気代が安くなる」というイメージがあるかと思われます。しかし燃料調整費や再生可能エネルギー発電促進賦課金が値上がりすると、たとえ節電をして使用電気量を少なくしたとしても価格的にあまり変わらない、という事になってしまうのです。「節電」をしているのに電気代が全然下がらない、という事にお悩みの方がもしいらっしゃるとしたら、その原因はまさにここにあるのです。
基礎知識その2:基本料金について
ここで先程説明を後回しにした、電気代の基本料金について見ていきたいと思います。そもそも電気代の基本料金は、どのように決まってくるのでしょうか?基本的には「契約電力」で決まってくる、と思っていただいて構いません。利用できる電力の上限を「契約電力」として、その「契約電力」の大きさで基本料金が決まってきます。ではその「契約電力」はどのようにして決まるのでしょうか。
「契約電力」は「実際に使った電力の最大値」が元となって決まります。つまり電気を多く使えば使うほど、この「契約電力」は高くなるということです。一般的に電力の最大値は、まず一日の内の30分間の電力使用量をもとに平均していって、その日最大値が決定されます。同様のその月の最大値も決めていき、更に一年通して月の中で最大の電力使用量となった所を契約電力として決めるのです。
この「最大の電力使用量」というのがポイントなのですが、例えばある年の8月10日に何らかの原因で突出して電気を使ったとしたならば、それが例え事故や偶然の結果であったとしても基本料金のベースとなってしまうという事です。その基本料金が電気をほとんど使わないような月にも適用されてしまうという事になります。つまり真夏の最も暑い時に冷房をガンガン使っていたような時の電力使用量を契約電力とされてしまい、それが電気をあまり使わない春先や秋の電気代にも適用されてしまうのです。
この仕組を逆に利用した「ピークカット」という節電方法があります。「電気を最も使う時間」に意識的に節電をすることで、契約電力を減らしていくのです。例えば真夏であれば冷房などの関係で、正午前後が一番電力を使います。なので正午前後にはなんとかして電気を使わないようにする、例えば冷房の温度を上げたり、照明などを落とすなどして、電力使用量のピーク値そのものを下げる、という方法です。これは確かに基本料金の値下げとしては効果的な側面もあるのですが、電気の使用量を常に監視している必要があるので、実現にはなかなか難しい所があると言えるでしょう。
しかしそうした電力使用量の監視などを行わずとも、基本料金を値下げする方法があるのです。それが「新電力」です。
基礎知識その3:新電力について
「電力自由化」という単語を聞いた事がある方もいらっしゃるかと思います。「電力自由化」とは、いままでは地方電力会社(東京電力・東北電力・関西電力など)により半ば独占状態だった電気が、誰でも自由に販売できるようになった、という事です。そしてその「誰でも自由に販売できるようになった」電気を、新しく販売する会社の事を「新電力」と呼びます。正式名称を「特定規模電気事業者」あるいは「小売電気事業者」と呼びます。
電力自由化は、2016年に家庭用含めた全ての電力において解禁されました。当時テレビや新聞などでも話題になっていましたので、多くの皆さんが「新電力」という言葉を聞いたのは、大体その頃では無いかと思います。しかし大規模工場やビルディング、中小工場、中小ビルディングなどでは、実にそれより10年以上も前から電力自由化が行われていました。全く新しい話では無く、それなりに年数が経っているのです。
新電力では会社ごとに、基本料金や燃料費調整単価などをある程度自由に設定できます。それらを値下げすることで、電気代の値下げを実現しています。つまり新電力に切り替えることで、電気代を大幅に値下げすることが可能になるのです。
しかし燃料費調整単価は、先程も説明したように、値下げすることもあれば値上げすることもあります。見積もりを出されて「電気料金が値下げになった」と思い切り替えてみると、実はそれは燃料費調整単価が値下げされていたためで、気がついたら燃料費調整単価が値上げになり結局電気代が値上げになった、という事も十分ありえます。新電力へ切り替える時には、基本料金部分を値下げしている会社を選んだ方が、安心だと言えるでしょう。
特に現在高圧電力を利用している工場や町工場、自社ビルや研究センター、ラボなどであれば、電気代基本料金は確実に安くなります。今まで色々見てきた経験上、90%以上のところで安くなると言えます。また一日の電気使用量の「差」が大きいようなところ、例えば昼間はたくさん電気を使うが夜間はほとんど電気を使わないようなところ、であれば特に大幅な基本料金値下げが期待できます。具体的には、電気代基本料金であればおよそ30~40%の値下げが可能です。電気代総額であれば8%前後の値下げが十分見込めます。これは年間で考えるとおよそ1ヶ月相当の電気料金が値下げできる、という事になります。製造業のコスト削減としては、十分な額だと言えるのでは無いでしょうか。
逆に例えば24時間操業の工場であったり、24時間操業でなくとも夜間に大量に電気を消費しているようなところ(冷蔵倉庫など)であった場合、電気代の大幅な削減はあまり期待できません。しかし「全く下がらない」というわけではありません。あくまでも削減幅が小さいという事です。
基礎知識その4:電気の質について
工場や町工場、自社ビルの電気代が大幅に安くなるのであれば、地方電力会社から新電力へと切り替えよう……とすぐになればいいのですが、なかなかそうはなりません。実は多くの製造業の皆様が同じような心配をされます。
「新電力に切り替えて、電気の質は悪くならないのか」
「機械は今までどおり使えるのか」
「停電が増えたりするのでは無いか」
工場電気ドットコムでは今まで多くの企業に新電力への切り替えをご提案してきましたが、皆様最初は同じような反応をされます。製造業の皆様は普段電気を使って仕事をされている皆様ですから、必需品である電気を切り替えるということに、やはり心配をされてしまうようです。しかし結論から言ってしまいますと、これらの心配は全くの無用です。
上の画像は発電所から私達のところまでの、電気の流れを簡易的に示した図となります。各発電所で発電した電気は、一旦超高圧変電所に集められ、まとめられて同質の電気になります。その電気が更にいくつもの変電所を通り、最終的に私達の家庭やオフィス、工場・町工場などに届くのです。地方電力会社や新電力会社それぞれが所持している発電所ごとに電気の質が違っていたとしても、それらはもう最初に変電所に集められた段階で一緒にされてしまいますので、質の違いなどは一切無くなってしまうのです。水道から出てきた水には、様々な川の水が混ざっていてしかもどの水道からも同じ質の水が出てくるのと、仕組としては同じようなものだとお考えください。つまり、新電力に切り替えた後の電気も今まで使っている電気と、質などは全く変わらない同じ物である、という事になります。電圧が不安定になったり停電などが増える、という事も一切ございません。
また仮に契約している新電力会社が倒産や経営危機などになってしまった場合でも、皆さんの所には常に電気が届けられるようにするための「電力の常時サポート」という仕組が法律で決められています。この仕組があるために、もし新電力会社に何かあったとしても、すぐに地方電力会社から代わって電気が供給されるようになっております。今までどおり安心して電気を使い続けることが可能なのです。
実際に私どもも多くの企業様に新電力への切り替えを勧めてまいりましたが、新電力に切り替えて以降電気が使えなくなったとか停電が増えるようになった、などというクレームは一切いただいておりません。インターネットなどで検索をしても、そのような事例は一切見つからないかと思います。
基礎知識その5:切り替え工事について
実際に新電力に切り替える場合、新しい機械を設置したり、電線の工事などをする必要があるのでしょうか?答えは「ありません」。電線などは従来使用されているものを、そのまま利用いたします(だからこそ「常時サポート」という仕組に対応できます)。また新電力に切り替えるからといって、新しい機械を設置する必要などは、一切ありません。
ただし電気メーターは、現在新電力とは関係なく「無償にて」新型のスマートメーターへの交換が進められています。そのため新電力に切り替える際にそれと併せてメーターを取り替える、という作業が発生する場合がございます。しかしこの作業は先程も書きましたように「無料」にて行われます。また作業時間も30分程度で完了いたしますし、その間電気が使えなくなるというような事は、一切ございませんので、ご安心ください。
もしも新電力を名乗る営業があなたの家や会社にやって来て、「新電力の切り替えに必要なので、工事をします(あるいはメーターを取り替えます)。まずはその費用をいただきます。」と言ってきた場合、それはほぼ確実に詐欺だと思われますので、くれぐれもご注意ください!
基礎知識その6:見積もりについて
ここまで読んできた方であれば、そろそろ自社の電気を新電力へ切り替えてみようかと思いはじめていらっしゃるかもしれません。そう思われたのであれば、まずは新電力会社にお見積りを出していただくのがいいかもしれません。
新電力会社は現在日本に400社以上あります。様々な新電力会社がありますので、複数社から見積もりをもらう事で、自分たちの工場・町工場にふさわしい新電力会社がきっと見つかることかと思います。
とは言え、複数社から見積もりをもらい比較検討するというのは、簡単そうに思えますが、これがなかなか大変な作業です。例えばインターネット上には「一括見積もりサイト」というものが存在します。ここに様々な条件や企業情報などを入力して登録すれば、色々な新電力会社から見積もりがもらえるというサイトです。確かにこうした一括見積もりサイトに登録するのも一つの手段かと思われますが、しかし実際には一括見積もりサイトに登録すると、多くの新電力会社から大量の営業電話やメールが来てしまう事になります。日々の業務をこなす上に、そうした多くの新電力から営業の連絡が来てしまうのでは、新電力へ切り替える前に疲れ果ててしまう事でしょう。
電気代の見積もりというのは、実は簡単に出せるものではありません。正確な見積もりを出すのに、最低でも一週間はかかります。それに加えて見積もりをお出しするには、最低でも直近1年分の電気代明細が必要になってまいります。現在のご住所や電気料金プランだけで見積もりを出すことも不可能ではありませんが、それは正確性に欠けた見積もりになってしまうでしょう。
工場電気ドットコムでは皆様の代理として、新電力に対して見積もりの取得や料金の交渉などを行ってまいります。特に皆様のような製造業に特化した、安心・安全な新電力会社を厳選しております。お見積りにはあらかじめ直近1年分の電気料金明細をご準備いただく必要がございますが、それ以降の新電力への交渉などは、全て私達が行わせていただきます。新電力から皆様の所へわずらわしい営業電話が直接来ることは決してありません。どうぞご安心ください。
基礎知識その7:お申込みの流れについて
新電力から電気料金の見積もりをもらってその額に満足して、それでは新電力に切り替えよう、となったときに、一体どのようにして申し込めばいいのでしょうか。基本的には切り替えにそこまでの手間はかかりません。ほんの数枚の申込用紙にサインか捺印をしていただくだけで、お申込みは完了となります。新電力への切り替えは、すぐにでも可能となります。
ただしこの時に、注意すべき点が一つだけあります。それは現在の電力会社との契約内容です。電力会社によっては「契約期間」を定めている事があります。もしその期間内に契約を他社へ切り替える場合、「違約金」などが必要となる場合があります。そうしたケースは稀なのですが、余計なトラブルを防ぐためにも、あらかじめ確認しておいた方がいいでしょう。
最後に
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。今回は「製造業の経理担当が知っておきたい電気料金を値下げするための7つの基礎知識」という事で、電気料金についてのあれこれを書いてきました。分かりづらいことや不明点、もっと電気代について知りたいという事などございますでしょうか?
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