ご記憶の方も多いかもしれませんが、今年の冬は全国的に電力不足でした。雪や日照時間の不足などが原因で、太陽光発電はその効力を十分に発揮できません。また世界的なLNG不足もあって、火力発電の燃料が大幅に減ってしまいました。正直いつ大停電が発生してもおかしくない状況でした。本当に運が良かったと思います。しかし次の冬も同様に電力が大幅に不足するだろう、という予測が経済産業大臣の口から直接語られました。
TBS NEWS:「冬の電力確保できない」経産相が対策検討を指示
資源エネルギー庁が今年度の電力需給の見通しを発表しました。夏は電力がギリギリ確保できる見通しですが、冬はここ数年で最も厳しい状況で、梶山経済産業大臣は早急に対策を検討するよう指示しました。
「この冬については現時点では東京電力管内において、安定供給に必要な供給力が確保できない見通しであります」(梶山弘志経産相)
梶山経産大臣は閣議後の会見でこのように述べ、電力の安定供給にむけて早急に対策を検討するよう指示しました。資源エネルギー庁によりますと、電力の需要がピークの際に最低限必要な「予備率」は3%ですが、この夏の北海道と沖縄を除くエリアでの「予備率」は3.7%とギリギリの見通しで、冬の東京エリアに至っては「予備率」はマイナス0.2%と、ここ数年で最も厳しい見通しとなっています。
再生可能エネルギーとして普及した太陽光発電が冬場はそれほど期待できないことや、火力発電所がここ数年で休止や廃止となり、電力の供給力が大幅に減少したためです。資源エネルギー庁は今月中に対策をまとめ、すみやかに実行するとしています。
これはかなり深刻な問題だと思います。今回の冬はなんとか乗り切れましたが、次の冬に大停電が起きないという保証はどこにもないのです。しかし一体どうしてこのような事になってしまったのでしょうか。
原因は3つ考えられると思います。まず一つ目は太陽光発電が普及してしまったこと。太陽光発電それ自体の普及には特に問題が無いのですが、先程も書いた通り太陽光発電は冬の発電量があまり多くはなりません。そのためあまり太陽光発電に依存しすぎると、冬季に発電量が大幅に減ってしまうというリスクを抱えてしまうことになります。今まで何度も書いてきていますが、こうした再生可能エネルギーでは安定して大量の発電を期待することは、難しいのが現状です。
次にLNGの問題です。LNGによる発電は火力発電の中でも温暖化ガスの排出量が少なく、比較的クリーンな発電方法です。この辺りのことについては、先般もコラムにて書きました。
そのため現在多くの国がLNG発電を利用しつつあります。しかしその結果として、LNGの取り合いが起きてしまっているのが現状です。そうなるとLNGの価格が上昇することは、想像に難くありません。またこの冬にも実際にLNG輸送でのトラブルが発生して、そのために日本になかなかLNGが入ってこないという事が起こりました。そうしたトラブルが今後いつ起きないとも限りません。
そして原因の三つ目ですが、やはりなんといっても日本では現在多くの原子力発電所が稼働を停止している、ということが挙げられるでしょう。これも何度も説明していることなので詳しくは書きませんが、原子力発電所の再稼働を少しでも早く進めていかないと、電力不足はいつまで経っても解消されないといってもいいかもしれません。逆に言うと原子力発電所を再稼働させれば、ある程度解決する問題だといっていいでしょう。
「脱炭素」の流れでは、温暖化ガスを多く排出する火力発電などはどうしても縮小せざるを得ません。しかし現在日本の発電の多くは、火力発電に頼っているのが現状です。「脱炭素」をやるのであれば再生可能エネルギーだけでは無く、温暖化ガスを排出しない原子力発電なども並行して使っていくしかありません。
上の記事中では、実は冬だけでなく夏の電力供給も「ギリギリ確保」というレベルになるということです。つまり夏冬関係なく、電力不足になるのは避けられないでしょう。いずれにせよ大規模停電だけは回避できるよう、早急な対策が必要だと思います。