平成30年北海道胆振東部地震で分かった現在の電力供給の問題点

2018年9月6日午前3時7分、北海道胆振地方を震源とした最大震度7を観測した揺れ、いわゆる平成30年北海道胆振東部地震が発生いたしました。

既に皆さんもご存知のことと思いますが、テレビやネットなどで見ることの出来る被害映像は、とても深刻なものです。大規模な土砂崩れや液状化現象、新千歳空港は終日閉鎖となりまた北海道新幹線も運転を見合わせました。現在この記事を書いている段階では死者16人、安否不明26人ということです。

そうした被害の中で、今回特に注目したいのは、北海道全域を襲った大停電です。

北海道、4割超で停電解消 火力発電所は順次再開 北電
6日未明の地震で起きた北海道内の全295万戸の停電について、北海道電力は、7日午前6時現在で約130万9千戸で停電が解消したと発表した。約4割超の世帯で復旧したことになる。

この記事を書いている段階での最新情報は、上の通りになっています。一時は北海道全域で停電が起こっていたのですが、そこからわずか一日足らずで4割超の世帯で電気が復旧したという事は、大変すごい事だと思います。北海道電力の関係者の方々の苦労が忍ばれます。

しかし今回なぜ、このような大規模停電が発生してしまったのでしょうか。

北海道地震、なぜ全域停電 復旧少なくとも1週間

今回の大規模な停電は「電力の需給バランスが崩れた」ことが原因とされる。需給バランスが崩れると、なぜこうした事態が起こるのか。

北電は道内の火力発電所が地震により緊急停止したことが原因としている。震源の近くに位置し、石炭を燃料とする苫東厚真発電所(厚真町)は、6日未明に全号機が運転中だったが地震により緊急停止した。同発電所は165万キロワットの発電能力を持ち、地震発生当時は北海道の使用電力の半分を供給していた道内最大の火力発電所だ。この発電所の停止が大きく影響し、連鎖的に道内の火力発電所も停止した。

■常に需給調整で周波数維持
電力は常に需要と供給が同量にならなければ「周波数」が安定せず、最悪の場合は大規模な停電が起きる。家庭などに送られる電気はプラスとマイナスが常に入れ替わっており、その入れ替わる回数を周波数と呼ぶ。この周波数を一定に保つには電力の発電量と使用量を一致させる必要があり、これが乱れると発電機や電気を使用する機器が壊れる可能性がある。電力会社は常に需要と供給が一致するように発電能力を調整して運用している。

北電は北海道全域でこうした調整をしている。今回は大規模な火力発電所が停止したことで電力の供給量が大きく減少したことから、連鎖的に発電所を停止させた。火力発電所を稼働させるためにも電力が必要で、北電は今後は水力発電所を動かして火力発電所に電気を送ることで発電を再開させていくとしている。ただ、送電線などの被害状況によっては復旧に時間を要する可能性がある。

発電所の「連鎖停止」はナゼ起きた? 北海道を襲った「全域停電」と過去の例

他の火力発電再稼働でもピーク需要に追い付かない
北電や世耕弘成経産相による説明を総合すると、地震発生時の管内の電力需要は300万キロワットで、そのうち約半分の165万キロワットを苫東厚真発電所が供給していた。同発電所が地震で自動停止したため、電力需給のバランスが乱れ、本来は一定に保つべき周波数が低下。周波数が乱れると機器が壊れる危険があるため、他の火力発電所も停止した。影響範囲は約295万戸に及ぶ。

北電は4か所の水力発電所を再稼働して苫東厚真発電所に送電し、苫東厚真発電所の再稼働に必要な電力を確保。同発電所を再稼働した上で他の発電所も再稼働する段取りだったが、苫東厚真発電所にタービンの出火やボイラーの損傷が確認され、復旧には「少なくとも1週間以上かかる」(世耕経産相)という。他の火力発電所を再稼働させたり本州側から電力を融通したりして9月7日には290万キロワットを確保できる見通しだが、9月5日のピーク需要は380万キロワットだった。

少し長い引用になりますが、今回の停電の主な原因としては上に書いてある事のようです。つまりいくつかある火力発電所のうち、大きな火力発電所が1つ停止してしまったことで、全体のバランスが崩れてしまい、連鎖的に全ての発電所が稼働を停止してしまった、という事でしょう。また一度止まった火力発電所の再稼働には、別のところから電気を送ってあげないとならない、というのもポイントでしょうか。

今回の平成30年北海道胆振東部地震は、確かに近年稀に見る大地震だったのは間違いありません。しかしそれにしても、発電所が1つ停止をしただけで、他の発電所も止まってしまい大規模な停電が発生する、というのは危機管理の面から見ても、少し疑問に思えます。

しかし実は今回のような状況を、以前から懸念していた人も少なからずいらっしゃいます。

つまり今回の平成30年北海道胆振東部地震が起きるずっと前から、北海道の電力は「足りていなかった」という事だそうです。その足りていない中、ギリギリでずっとやってきていたのが、今回の地震によりとうとう破綻してしまった、という事です。

北海道地震、全域停電は北電による「人災」か…危うい電力供給体制を放置、対策怠る

「近年、国内でこれほど広範囲でのブラックアウトは珍しいです。予測不能な自然災害によるものなので仕方のない面もありますが、やはり北海道という広い地域において供給量の半分を苫東厚真発電所1カ所に依存するリスクが露呈したといえます。2012年に泊原発が運転停止した後、今回のような事態が十分に想定可能ななかで、そうした危うい電力供給体制を放置してきた北電の責任は大きいです。

もちろん今回の停電は、あくまでも地震が引き金になって起きてしまった事です。なので「人災」とまで言ってしまうのは、少し言い過ぎのような気もします。それよりもポイントとなるのは、本文中にある「供給量の半分を苫東厚真発電所1カ所に依存するリスク」という部分でしょう。一体なぜ北海道のメインの電力供給を苫東厚真発電所1カ所で賄うようにしていたのでしょうか?

実はその答えも同じ文章中に書かれています。それは「2012年に泊原発が運転停止」したためです。

2011年の東日本大震災に伴って発生した、東京電力福島第一原発事故。あの事故以降、原子力発電への信頼が激しく下がりました。そして日本にあるほとんど全ての原子力発電所は、稼働を停止してしまったのです。

もちろん当時はそういう世論が中心になっていたのは間違いありません。しかし結果として、既に稼働を停止していた火力発電所を再稼働させることで、電力を補わないといけなくなりました。しかし原子力発電所は、それら火力発電所よりも多くの電力を大量に安価で発電することが出来るのです。

火力発電所がメインの発電となった結果、火力発電の燃料を購入するための費用「燃料調整費額」が私達の電気代に上乗せされることになりました。それだけでは無く、太陽光発電や風力発電など、いわゆる再生可能エネルギーを促進させるための「再生可能エネルギー発電促進賦課金」も、私達が支払う電気代に上乗せされて、電気代は大幅に値上がりすることになったのです。その上さらに「実は電気が足りていない」となっては、あまりにも理不尽すぎるのでは無いでしょうか?

もし泊原発が稼働していれば、今回のような大停電は起きていなかったのでは無いか?という話もあります。あくまでも「もしも?」の話なので、実際にどうなっていたかは、今となっては分かりませんが、ただそれでも少ない火力発電所だけで電気を賄うようなやり方では、こういう何かあった時に対応できなくなる、というのはハッキリしたと言えるのでは無いでしょうか?ちなみに泊原発は今回の震源から遠かったこともあり、大きな異常などは見られなかったようです。

また今回の地震は夜だったこともあり、太陽光発電に頼る事は出来ませんでした。太陽光発電が動作していた昼間であれば、もう少し停電被害を抑えることが出来たのかもしれませんが、それもやはり「もしも」の話になります。

以前から繰り返し書いていますが、「この発電はOK、この発電はダメ」というように、発電の種類によっていい悪いを簡単に決めることは出来ません。どれか1つの発電方法だけに頼っていては、ちょっとバランスが崩れてしまうと今回のような大規模な災害に繋がる可能性があります。肝心なことは、複数の発電方法を利用して、災害に備えたリスクの分散をしないといけないという事でしょう。例えばメインは原子力発電所にして、予備として火力発電所や水力発電所を利用。さらに小さい範囲での発電として、風力発電や太陽光発電を利用する、などといった具合です。そして常に余裕のある発電量が必要です。もしも今回の地震が真冬に起こっていたとしたら、停電により多くの暖房などが止まっていたでしょう。真冬の北海道で停電が起きると考えただけで、背筋が寒くなってしまいます。

電気は今の日本では必要不可欠なものです。電気が無くなることで、失われてしまう物や命があります。そうした事実を客観的かつ化学的にふまえ、一時の感情に流されないよう、余裕ある電力対策を進めていくことこそが、本当に求められている時期になってきているのでは無いでしょうか。

最新のニュースでは、新千歳空港が運行を再開するという情報も入ってきています。北海道新幹線も運転を再開する、という情報も入ってきております。これらの裏には、多くの人々の多大なる努力があった事を、忘れてはいけないと思います。

最後になりますが、平成30年北海道胆振東部地震の被害に遭われた皆様には、心よりお見舞いを申し上げます。そして一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。