水力発電以外のダムの役割とは

水力発電について」のページにも書きましたが、ダムには水が流れる力を利用して発電をする、という役割があります。簡単に言うと、高い所にあるダムから水を流すことで水車を回し、その水車で発電機を回して発電をするのです。

しかしダムの役割は、発電のためだけではありません。では他にはどういう役割があるのでしょうか?実はダムにはおおよそ、4つの役割があると考えられています。

  • 水力発電
  • 河川環境の維持
  • 下流の雪を融かす
  • 洪水防止

水力発電」については、すでに紹介いたしました。私達の生活に欠かせない電気をつくる、とても大切な役割です。多くの原子力発電所が稼働を停止している今、とても大事な発電施設となります。

次の「河川環境の維持」ですが、ダムからの放水を計画的に行うことで、下流の水量をコントロールしています。干ばつの時なども、ある程度安定した水の供給を行うことが出来るので、水不足などが起きにくくなります。

下流の雪を融かす」ですが、河川に雪が積もってしまったような場合、ダムから放水をすることで、その勢いを利用して積もった雪を融かす用途があります。

しかしダムの持つ一番大きな役割は、やはり「洪水防止」の役割だと言ってもいいでしょう。

ダムは川の水を貯めておくことが出来ます。豪雨や台風などに襲われた際に、もしダムが無ければ川の上流に降った大雨が、そのまま河川に流れてくる事になってしまい、洪水の危険性があります。しかしダムがあれば、上流から流れてくる大量の水を、ダムの中に大量に貯めておくことが出来るのです。これにより、下流域に洪水被害が起こることを未然に防ぐことが出来るのです。

しかし想定を越えるような豪雨の時は、また話が少し違ってきます。特にこの数年のゲリラ豪雨や巨大台風などでは、ダムに貯めておける以上の雨量になってしまう事があります。そのような場合、ダムはぎりぎりまで水を貯めておくのですが、限界に達しないようにある段階で水を放流せざるを得ないことがあります。その際にはもちろん、あらかじめ下流域の住人に対して、避難を呼びかけます。そして貯まった水を放流するのですが、この際大量の水が河川から溢れてしまい、洪水になってしまうことがあります。近隣の住民には、あらかじめ避難指示を出しているので、被害者は最小限に食い止められます。

もちろんこの措置は、とてつもない豪雨や台風などの時にどうしようも無いくらいに水が貯まってしまった場合の、いわば緊急措置なのですが、しかし一部の方々はこれをもってして、「ダムがあったから洪水が起きた」と考えてしまっているようです。特に先日の西日本豪雨の後に、このような事を言っている方が多く見られました。

結論から言えば、そのような事は全くありません。むしろダムは洪水が発生しないように水を貯めておき、避難するための時間を稼いでいてくれるようなものなのです。止むを得ず放水する場合は、あらかじめ警告を出してくれるわけですから、下流の住民の方はそれを聞いて避難すればいいのです。ダムには確かに限界がありますが、洪水が起きるまでの間に避難する時間を、確保してくれているのです。またダムは小規模な洪水などが起きるリスクを、無くしてくれているのです。しかしダムが放水したことと洪水が起きたことだけを短絡的に結びつけて、ダムに対してあらぬ非難をする人がいるのは、いささか早計すぎると言わざるを得ません。

もしダムが無くなれば、豪雨の際により早い段階で洪水が起きて、避難する間もなく多くの被害者が出てしまうでしょう。また洪水により、周囲の環境も大幅に変えられてしまうことでしょう。ダムとはそれだけ重要な施設なのです。

以上書いてきましたように、ダムは発電にだけ使われるのではありません。それはもっと、私達の生活に直結した使われ方をしているのです。ダムの役割を正しく理解して、正しく使うことこそが大事なのでは無いでしょうか。