2019年もまだ残り3ヶ月近くありますが、振り返ってみると特に太陽光発電に関しては、大きな転換の年であった、ということが出来るかもしれません。
2019年問題
特に大きく騒がれていたのが「太陽光発電の2019年問題」です。これは2009年にスタートした「余剰電力買取制度」に記された、高額での売電期間が満了することからこのような名前がつけられ、騒がれていました。
2009年に決められた太陽光の売電価格は、48円/kWhでした。これはかなりの高額だといっていいでしょう。そのため当時、大量の太陽光発電システムが設置されました。「あなたの家庭も太陽光発電にしませんか?余った電気は高額で買い取ってもらえます」というような営業トークを聞いたことがある方も、いらっしゃるのでは無いでしょうか?
しかしこうした電気の買取費用は、私達の電気代に「再生可能エネルギー発電促進賦課金」として、上乗せされることになりました。その後2011年に東関東大震災により発生した津波で電源を消失したために、東京電力福島第一原子力発電所事故が起きてしまいました。結果日本では全ての原子力発電所が稼働を停止し、結果として私達の電気代は更に高く値上げされるようになってしまったのです。
話を戻しますが、この買取価格である「48円/kWh」が終了するのが、2019年だったのです。太陽光発電により発電された電気の買取制度はまだ続きますが、今後はその買取額単価が大幅に減らされることになります。
いわゆる「2019年問題」は上記のような概略なのですが、ここに来て更に再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度から、太陽光発電が除外されるかもしれない?という話が出てきました。
再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の見直し
再生可能エネルギーでつくった電気を大手電力会社に全量買い取ってもらえる固定価格買い取り制度(FIT)について、経済産業省は5日、新設の大規模な事業用太陽光発電と風力発電を対象から外す見直し案の概要を公表した。これにより2011年の東日本大震災と東京電力福島第一原発事故以降に本格化した再生エネの支援策は転換点を迎える。
大規模の地熱発電や中型の水力発電は、費用や事業リスクが高く新規導入が進んでいないとして、開発段階での費用補助などの支援策を検討する。住宅用と小規模事業用の太陽光発電、小規模地熱、小型水力、バイオマスは、地域振興や災害時に役立つとして、当面はFITを維持する。
産経新聞:「太陽光バブル」の終焉 経産省、FIT見直し 野放図な拡大で利用者負担増
九州で起きた「太陽光バブル」が終焉(しゅうえん)を迎える。経済産業省は、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)の見直しを打ち出した。平成24年度に導入されたFITによって、再エネの野放図な拡大と、利用者負担の増大という当初から懸念されていたデメリットが、想定通りに起きた。導入から7年。軌道修正は遅きに失したといえる。
経産省は今月5日、「国民負担額の増加」などを理由にFIT見直しの中間整理案をまとめ、有識者委員会から大筋で了承を得た。メガソーラー(大規模太陽光発電)や風力発電を買い取りから外す方針。
詳細が決定するのは、2021年以降になると思われます。しかし太陽光発電に対してこのような動きが出てきた、というのはかなり大きな話だといっていいでしょう。
太陽光発電の功罪
長らく太陽光発電は「エネルギー問題を救ってくれる万能なクリーンエネルギー」だと思われてきました。しかしこの数年で、そうしたイメージがかなり崩れてきているのが現状です。
昨年この「2018年7月の豪雨で露呈した太陽光パネルの思わぬ弱点」と「2018年9月の台風21号でより明確になった太陽光パネルのデメリット」でも書きましたとおり、太陽光発電にも弱点があります。太陽光パネル自体は薄い板なので、しっかりと固定しないと台風などで飛ばされてしまいます。飛散した太陽光パネルが住居やビルディングなどに当たってしまう危険性は、十分あります。また太陽光パネルは太陽が当たると自動で発電を始めてしまいますので、飛散した先でも発電をしてしまいます。その際に地面などが濡れていると、地面の水を通じて感電などの恐れもあります。
また太陽光パネルを設置するためには、広い敷地が必要ですがそのような敷地が無いために、山林や斜面などを無理やり切り開いて、そこに太陽光パネルを設置するということが多く見られます。しかしそうした場所では、特に斜面などでは大雨が降ってくると土砂崩れを起こしてしまうことがあります。
他にもこのような話が出てきています。
デイリー新潮:京セラの「自然に優しい」太陽光発電がイワナ・ヤマメを全滅させた!
自然に優しいエネルギーの決定版のように語られる太陽光発電だが、京セラによる発電所の設置工事現場では、聞こえるのは悲鳴ばかり。引き起こされていたのは「自然に優しい」が聞いて呆れる環境破壊だった。
茨城県の水戸や日立よりもさらに北の山中を訪れると、山林が禿げたように切り開かれ、下から眺めると、遠目に太陽光パネルがうっすらと見えた。
今なお工事中の、この国木原太陽光発電所について、ネットなどには、「日本の未来に貢献」といった文言が躍るが、現場の下方を流れる十王川の川底には、異常なほど土砂が溜っているのが、素人目にも確認できる。その上流の黒田川に至っては、堆積した砂が水面の上にまで顔を覗かせる。
中略
「工事が始まると土砂が流れ出た。雨が降るたびに粘土質の黄色い土砂が流れ出し、工事が始まってから時間が経過しても、全然改善されないのです」
地元の関係者に、もう少し詳しく語ってもらおう。
「十王川では毎年4~6月にヤマメやイワナを放流して釣り客を誘致し、住人は日釣り券の売り上げを生活の足しにしてきました。漁協もあって組合員が200人くらいいます。ところが昨年は、放流した稚魚が全滅。粘土質の土砂が混ざった濁流が流れ込み、土砂がエラに詰まって窒息死してしまったのです。魚を狙う野鳥も現れなくなりました」
「自然に優しい」を謳い文句にしているはずの太陽光パネルが、自然に優しいどころか自然を破壊している、というのはなんとも皮肉な結果では無いでしょうか。しかしこうした危険性は、実は以前から指摘されていました。むしろそうした危険性に対して見ないように聞かないように、としていた「太陽光バブルでの熱狂」こそが、最大の問題だったのだと言えるでしょう。
今こそ冷静な議論を
「太陽光発電」は万能ではありません。そもそも万能な発電方法など、ありません。原子力であろうが太陽光であろうが、必ずメリットとデメリットが存在します。大切なのは、そのメリットとデメリットを比べて、どちらがより効率的なのか、どちらがより安定した電気を大量に供給できるのか、ということを正確なデータを元にして冷静かつ理論的に検討していくか、ということになります。
「原子力発電所が事故を起こしたから、全ての原子力発電所を止めてしまおう。」「太陽発電は環境に優しいらしいから太陽発電を増やそう。」というような、その場の思いつきや感情だけで、大切なことを決めてしまっては、後々になって困ったことになってしまうのです。実際に原子力発電所が止まることで火力発電中心になったことで燃料調整費用が、再生可能エネルギーを普及させるという名目で太陽光による電気を高額で購入するために再生可能エネルギー発電促進賦課金が、それぞれ私達の電気代に上乗せされてしまい、電気代が値上がりを続けてしまっています。最終的にツケを払わされるのは、結局私達なのです。
最後に
太陽光発電には、まだまだ多くのデメリットや課題があります。しかしだからといって、研究や普及を進めなくていい、ということには決してなりません。周囲の環境を破壊することなく「どのように使えば最も効率的に利用できるのか」「太陽光発電の効率をもっと上げる方法は無いのか」ということを模索していくことが大切です。
2019年は太陽光発電にとって、ひとつの大きな分岐点になるのは間違いないと言えるでしょう。