水上太陽光発電火災のその後

水上型太陽光パネルは救世主になりうるのか?

以前「水上型太陽光パネルは救世主になりうるのか?」のコラムの時にも書きましたが、今年9月の台風15号による被害の中で、千葉県の水上太陽光発電所にて火災が発生した、という事故がありました。

ライブドアNEWS:千葉県のメガソーラー発電所で火災 台風による強風が原因か

9日午後、千葉県市原市のダム湖にある水上メガソーラーのソーラーパネルが台風の強風で吹き寄せられ、何らかのきっかけで火災が発生した。

市原市の山倉ダムには、およそ5万枚のソーラーパネルを湖面に浮かべたメガソーラー発電所があるが、映像からは本来、規則正しく並んでいるはずのソーラーパネルが吹き寄せられているように見える。消防では台風の強風が火災の原因とみているが、消火作業のためにはソーラーバネルへの通電を止める必要があり、消火のめどは立っていない。また、市原市内ではおよそ6万5000軒が停電しているが、関連はわかっていないという。

この事故につきまして、つい先日その原因が明らかになったというニュースが入ってきました。

ダイヤモンド・オンライン:水上太陽光発電の台風による火災事故、原因が明らかに【続報】

山倉ダム発電所の構造を見ると、太陽光パネルの周辺にフロート(浮き具)を装着し、ワイヤー状の係留線を水中に伸ばし、アンカーという杭を地中に打ち込んでパネルが流されないようにしている。

今回用いられていたのは、係留線828本、アンカー420カ所だった。

そこに設計風速(秒速41.53メートル)を超える風が発生したことで、想定荷重を超えたと見られる。また風や波によってパネルが揺れ動いてかたよった荷重がかかったことで、一部のアンカーが抜けてパネルが押し流され、巻きあがったり折り重なったりしてしまったのが事故の根本原因だ。

つまり水上に浮いている太陽光パネルを固定するためのアンカーが、強風や波などによって抜けるなどしてしまい、結果としてパネルが巻き上がったり折り重なったりなどして、それが元で火災になってしまった、ということのようです。

以前も書きましたが、水上に太陽光パネルを設置するという方法それ自体は、広い敷地が確保できるということもあり、現在日本でも多く導入されつつあります。しかしその弱点として、大波や強風に弱いということがあげられていましたが、今回の火災ではまさにその弱点よって発生してしまった、という事になります。それであれば、その弱点に対して何らかの対策を講じることが必要だと思われるかもしれません。実は対策は既に考えられているのです。

こうした水上の太陽光パネルはフロートと呼ばれるものの上に置かれています。そのフロートには注水できるタイプがあり、水を入れることでフロート自体の重さを増し、波や風に対抗することが出来るのです。

山倉ダム発電所を再開するためには、何よりも再発防止策が欠かせない。そもそも、この事故を未然に防ぐ方法はなかったのか。

別の水上太陽光発電事業者に聞いたところ「フロートに注水すれば被害をもっと抑えられたのではないか」と指摘する。

実は水上太陽光発電所に用いられるフロートには、注水口が付いているタイプがある。そこから1個当たり数十リットルの水を注げば、浮力は落ちるもののパネルが風で浮き上がるのを防止できるのだ。

ちなみに京セラTCLソーラーが使用していたフロートは、世界大手の仏シエル・テール社製だが、これも注水できるタイプだった。

実は昨年の台風で、大阪府の水上太陽光発電所でも、山倉ダム発電所ほど大きくなかったものの似たような事故の事例があった。ここは1度目の台風で破損する被害を受けた後、フロートに注水することで2度目の台風による被害は防げた。

この点を京セラTCLソーラーの広報担当者に聞いたところ「被災した1度目の台風15号では注水していなかった。2度目の大型台風19号では注水して強風対策をした」と話す。

このように過去に似たような事故があり、そこでは2度目の台風の際にはフロートに注水をすることで同様の被害を防いでいたのです。そして今回事故があった同じ発電所でも、15号のあとの19号の時には、フロートに注水することで事故を未然に防いでいたのです。

対策が出来るのならば、なぜ最初の時にはそれを行っていなかったのか?という意見があるかと思いますが、それに関しては台風の威力を過小評価していたと言われても仕方ないでしょう。そして肝心なことは、これから同様の被害を繰り返さないことです。

もう今年の台風シーズンは過ぎました。しかし台風は毎年のようにやってきます。次に台風が来たときに、同様の対策が行えるのかどうか。更に今回幸いにして事故が起きなかった他の水上ソーラー発電施設でも、今回の事故を自分たちへの教訓として活かせるかどうか。そこが肝心になってくると言えるでしょう。