福島県にある洋上風力発電が全撤退する、というニュースが入ってきました。
Yahooニュース:福島の洋上風力発電、全撤退へ 600億投じ採算見込めず
政府が、福島県沖に設置した浮体式洋上風力発電施設を全て撤去する方針を固めたことが12日、関係者への取材で分かった。東京電力福島第1原発事故からの復興の象徴と位置付けて計約600億円を投じた事業で、民間への譲渡を模索していたが、採算が見込めないと判断した。経済産業省は、来年度予算の概算要求に撤去関連費50億円を盛り込んだ。再生可能エネルギー関連の産業を推進する福島県にも痛手となりそうだ。
「脱炭素化社会」へ向けて、再生可能エネルギーを普及させていかないといけない矢先に、このニュースはかなり残念だと言わざるを得ないでしょう。しかしこれはある意味、仕方ないことかもしれません。
洋上風力発電については以前も書きました。
洋上風力発電とは文字通り、風力発電の風車を海の上に建設する方法です。風力発電にはもともと騒音対策などのために広大な土地が必要となってくるのですが、それを解消するために、海上に風力発電を設置するという流れが出来つつありました。特に2019年に「再エネ海域利用法」が施工され、海上にこうした発電施設を作ることが出来るようになったため、これからどんどんと発展していくだろう、と思われていました。
特に土地などの制限もなく、また騒音などの影響も小さいので、従来の風力発電よりも期待されていたのは間違いありません。しかしそうしたメリットに対して、当然ですがデメリットもあるわけです。特に発電施設が海上にあるということは、どうしてもメンテナンスなどの作業にかなりの手間とコストがかかってしまいます。また海から陸地まで電気を運ぶためには、長いケーブルも必要になってきます。それでいて発電量は風によって多くなったり少なくなったりするので、非常に安定しません。海上なので地上よりは大きな風が期待できるのでしょうが、それでも不安定な発電量になってしまうのは間違いないでしょう。そうした発電量とコストとのバランスを考えると、やはり洋上風力発電はなかなか難しかった、というところでは無いでしょうか。
発電にとって最も必要なことは、安定した電気をいかに大量に生み出せるか、というところに尽きます。極端な話、環境に優しいかどうかという事は、それほど大事ではありません。もちろん両立すればそれに越したことは無いのですが、両立しないのであれば、やはり発電量と安定性の問題がもっとも大切になります。そして再生可能エネルギーによる発電で、それらをクリアしている物は、現状全く無いと言ってもいいでしょう。
もちろんこのままでいいという事ではありません。こうした現実を踏まえて、再生可能エネルギー発電でどこまで効率的に発電が出来るか、安定して大量の電気を生み出せるようになるか、が脱炭素社会を目指すにあたっての、最大のポイントとなってくることでしょう。そのためにはやはり研究が必要不可欠になってきますし、実現するまでは他の手段で大量の電気を安定して作り出していくしか無いのです。