毎日新聞:長野・霧ケ峰メガソーラー撤回 水源、貴重な動植物…「国内最大級」住民NO
長野県諏訪市郊外の霧ケ峰高原周辺で、大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設計画「諏訪市四賀ソーラー事業」(仮称)を進めていた新電力会社Looop(ループ、東京)がこのほど、県などに事業からの撤退を伝えた。事業面積は東京ドーム約40個分で、そこに約31万枚のパネルを並べるという「国内最大級」の開発事業が白紙となり、自然保護を訴えてきた地元住民は胸をなで下ろしている。
この長野県メガソーラー計画については、以前からたびたび問題視されていました。
メガソーラーとは大規模太陽光発電システムの事です。大量の太陽光パネルを設置するのですが、そのためには広大な平地が必要です。しかし日本にはそれほど広大な平地というのは実はあまり存在いたしません。そのため中には、山林や森林などを切り開いてメガソーラーを設置する事があるのですが、結果として樹木が失われてしまうというリスクがあります。また樹木が失われた結果、山崩れなどを誘発する危険性も指摘されていましたし、実際に台風などの影響で山崩れを起こしてしまったメガソーラーも確かに存在します。
特に今回の霧ヶ峰の場合、水源のそばに設置計画が持ち上がっていたため、上記の問題点に加え、さらに水質への影響も懸念されていました。太陽光パネルには、種類にもよりますが、鉛やカドミウムなどの有害物質が使用されています。確かにそれらが水源にどのような影響を与えるのか、という懸念が出てくるのも当然だと言えるでしょう。
今回のメガソーラー計画の中止は、近隣住民の方にとっては大きな安心になったかと思います。しかしそれでは計画で発電されるはずだった電気をどうやって賄うのか、という新しい問題が出てきてしまいます。
当然ですがメガソーラーの計画があったという事は、それだけの電力が必要だった、ということに他なりません。計画の中止により、その分の電気をまた別の方法で作り出さないとならないでしょう。
発電にはどうしても環境問題が絡んできます。たとえそれが再生可能エネルギーであったとしても、大なり小なり環境への影響は出てきてしまいます。また再生可能エネルギーの場合は、安定して大量の電気を生み出すという事自体が難しくなってしまう事もあります。こうした問題は、いつまでも棚上げにしておくわけにはまいりません。
今回のメガソーラー計画中止は、日本中で展開されている同様な計画にも、大きな影響を与えることでしょう。太陽光発電自体の勢いにも影響してくるかもしれません。しかし現在原子力発電所の多くが稼働停止している現状では、なんとかして安定して発電量を確保することは、優先されなければいけない事でもあります。いずれにせよ、リスクとリターンを正しく理解して、冷静な議論が行われていくことが電気と環境の問題を解決していく、数少ない方法だと言えるでしょう。