「全農地の半分を太陽光発電にすれば原発はいらない」は本当か?

元首相である菅直人氏が、先日Twitterでこのような発言をしており、話題になりました。

ポイントとなるのはこの部分です。

農地を農業と太陽光発電に使うソーラーシェアリングについて試算したところ、全農地の半分でソーラーシェアリングすれば必要な電力は供給できるという結果が出ました。

どのようなデータを用いて試算したのかが不明ですが、とにかくそういう結果が出たという事なのでしょう。そしてその試算通りの電力が供給できるとしましょう。しかしそれでもやはりこの結論は、明らかに間違っていると思います。

理屈は簡単です。日本の全農地の半分を太陽光発電として利用する、ということはそっくりそのまま日本の農地の半分が失われてしまう、という事になるからです。特定の季節だけ農業を行って、他の季節は太陽光発電にする、というのでは手間がかかりすぎだと言えます。そして農地が失われてしまうということは、国内での農産物の生産量も半分もしくはそれ以上に落ちてしまうことになってしまうでしょう。「電気」という観点からは面白い発想かもしれませんが、現実にはなかなかそうは行きません。

まだまだ他にも問題点はあげられます。何度と無く書いてきている事ですが、太陽光発電は曇天や雨天時には発電量が抑えられてしまいます。更に夜間は発電すら出来ません。これは非常に不安定な発電ということになります。また台風などにより太陽光パネル自体が飛散してしまうこともあります。これはここ数年の台風被害で明らかになってきました。また土砂崩れや水害のなどの可能性も懸念しないといけないでしょう。

更にメンテナンスの問題もあります。以前も書きましたが太陽光パネルは「雑草」が天敵です。場合によってはパネルの下からタケノコなどが伸びてきてしまい、パネルを倒してしまうという事例もあるようです。

太陽光発電の意外な弱点とは?

こうしたメンテナンスなどの費用も計算しないで「太陽光発電は安くて経済的!」のように宣伝してしまうのは、少し不公平にのようにも思えます。

もちろんいずれは太陽光を始めとした再生可能エネルギー発電が、主流となっていくことでしょう。そうならざるを得ないと思います。しかし発電は「大量」にそして「安定」して行えるという事が最重要となってきます。そして現在の再生可能エネルギー発電の技術は、まだその問題を十分に改善できているとは言えません。

火力発電は以前よりはクリーンになったとはいえ、温暖化ガスの問題や燃料となる原油価格の問題もあります。水力発電は新規で大きなダムを作るという事自体が難しくなってきています。となれば現状稼働を停止している原子力発電所を再稼働させることが、現在の日本の電気に関連するあらゆる問題を解決する方法である事は、もはや疑いようが無いのです。

もちろん原子力発電所は、事故の問題もありますので、いずれ縮小せざるを得ません。その代替となるのは、再生可能エネルギー発電でしょう。しかし再生可能エネルギーでの発電が安定かつ効率的になるまでは、原子力発電所で電気を賄っていくのがベストな方法なのです。

電気は「ライフライン」です。私達の生活、命の関わってくる問題です。「環境に優しい」「クリーンだ」というイメージだけで主要発電を決めていっては、問題が出るのは明らかです。特に太陽光発電は現実にはメンテナンスや安定性の部分から、主要な発電施設として利用していくにはまだまだ大きな問題があります。もちろんその問題をしっかりとクリアしていく必要はありますが、今はまだその時では無いといえるでしょう。